女性アスリート健康支援委員会 「食」の要注意サイン、ありませんか

「太るのが怖い」…スポーツ女子が陥る摂食障害
治療が必要な心の病気、「勇気出し相談を」と専門家

 ◇実は多い過食症、見た目では気づきにくい

 拒食症にかかり、あまり食べないまま低栄養状態が続くと、低体温や低血圧になり、心拍数が低下します。次第に筋力が低下して、体が疲れやすくなります。便秘がひどくなったり、髪の毛が抜けたり、肌がかさかさになったりすることもあります。

 それなのに、本人がなかなか「病気だ」と考えず、治療を受け入れない場合があるのが、摂食障害の怖いところです。西園先生は「拒食症だと分かり、『運動を休みましょう』と本人に勧めても、『休むのは嫌」と言って聞かないことが多い。そのまま運動をストップできないと、重症化し、命に関わることもあります」と注意をうながします。

 こうした拒食症よりも患者が数倍多いとみられているのが「過食症」です。正式には「神経性過食症」と言います。

 発症年齢のピークは大学生くらいの年齢で、中高生のスポーツ女子ももちろん注意が必要です。西園マーハ先生は「見た目の体形があまり変わらない人がほとんどで、周囲の人にも気づかれにくい病気」と説明します。

 摂食障害の啓発シンポジウムで、選手時代の減量苦からの摂食障害が引退後も尾を引いた体験談を話す元女子マラソン日本代表の原裕美子さん(左から2人目)と西園マーハ文先生(中央)=2019年6月2日、東京・六本木
 たまにおやつのお菓子を大食いしたり、「やけ食い」したりするのはよくあることですが、過食症と診断された人は、「むちゃ食い」をコントロールできなくなる「過食」を頻繁に繰り返しています。「食べた物をわざと吐いてはまた食べる」「下剤を乱用する」といった行動をやめられなくなってしまうことも多く、胃酸で歯の表面が溶けたり、体の中のカリウムが失われて心臓に不整脈が出る人までいます。

 拒食と過食を繰り返す人もいます。「拒食症が治る過程で、過食気味になり、『体重が増えてしまった』とあせって、また拒食状態になると、摂食障害が長引きます」(西園マーハ先生)。思春期にかかった摂食障害が長引き、大人になっても治らず、長い間、苦しんでいる人も中にはいます。

 ◇長引かせないため、受診をためらわないで

 しかし、摂食障害は精神科医や心療内科医といった専門家の診察と適切な治療を受ければ、十分治る病気です。スポーツ女子の場合、練習を制限したり、食事を増やしたりして、心と体の健康を取り戻していきます。

 早い回復のためには、早めの治療がやはり、何より大切です。西園マーハ先生は「スポーツ女子には、スポーツのトレーニングだけでなく、健康管理にも興味を持ってほしい。摂食障害かもしれないと思ったら、勇気を出して、まず家族や部活の指導者、学校の養護教諭の先生といった周りの人に相談してください」と勧めています。(水口郁雄)

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