「医」の最前線 「がん専門医」の「がん手術」体験記

麻酔切れると激痛
「がん専門医」中川恵一氏の体験記〔2〕

 がんの進行の度合いを示す「進達度」は最も浅い「pTa」タイプで、ホッとしました。しかし、がん自体の治療の難しさの目安となる「がん細胞の悪性度」は1〜3の真ん中の2でした。しかも、2の中でもハイグレード、つまり「かなり悪性度が高く、たちの悪い」タイプです。自分では「1」ならいいなあ、と思っていましたから、ハイグレードと分かったときはかなりショックでした。

 ◇まずがん検診を

 しかし、もし発見が遅れて膀胱の筋肉の層にまでがん細胞が広がっていたとすると、膀胱全摘が必要となってきます。その場合、小腸(回腸)の一部を切り取り、一方を閉じた上で「回腸導管」と呼ぶ「代用膀胱」を作り、両側の腎臓で作られた尿を膀胱まで運ぶ尿管2本をつなげます。そして、回腸導管の一方をお腹に直接出して「ストマ」(ラテン語で「乳頭状に突き出した口」)を作って袋に尿をためることになります。

切除したがん組織

切除したがん組織

 がんは症状が分かりにくい病気です。まして、早期ではほとんどの場合、何も感じません。私の膀胱がんでも、全く自覚症状などありませんでした。また、現時点では効果的な検診方法も確立されていません。脂肪肝のチェックのために自分でした超音波エコー検査のついでに発見できたのは、本当にラッキーでした。

 膀胱がんの「セルフチェック」はさておき、早期発見につながる乳がんの自己触診など、日本人はもっと自分の体を大切にするべきだと思います。まずは、がん検診をきちんと受けることから始めてください。

【略歴】中川恵一氏(なかがわ・けいいち)
東京大学医学部准教授、同付属病院放射線治療部門長。1960年生まれ。85年東京大学医学部卒業、同部専任講師などを経て現職。厚生労働省「がん対策推進企業アクション」議長なども務める。「最強最高のがん知識」「がんの時代」などがんに関する著書多数。

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