こちら診察室 依存症と向き合う

第4回 日本にカジノで喫緊の課題に 
ギャンブル依存症の対策・治療 久里浜医療センターの「今」

 ギャンブル(賭博)は、あるものを賭けて、より価値のあるものを手にいれる行為。勝つか負けるかはほとんど偶然に支配されています。アルコールのように昔から人々の楽しみとして親しまれてきましたが、2018年に「カジノを含む統合型リゾート実施法」が成立、多くの自治体がカジノ建設を目指しています。これを機にギャンブル依存症が注目され、政策面や医療面での包括的な対策が喫緊の課題となっています。

シンガポールのカジノ【時事】

 ◇コントロールできず

 日本でギャンブルは刑法で禁止されていますが、競馬、競輪、競艇、オートレースは、その公益性から公営競技として開催されています。パチンコ・スロットは法律的には遊技と位置づけられていますが、射幸性や換金性といったギャンブルの要素を含むでしょう。

 世の中には、全くギャンブルをしない人もいれば、娯楽として行う人もたくさんいます。しかし、中には賭け事がやめられず、金銭的な問題を超えて生活にまでさまざまな困難を及ぼす場合があります。

 依存には、アルコールや大麻、覚せい剤等といった薬物があります。これらは「物質依存」といい、ある物質を摂取することで重大な問題が生じているにもかかわらず使用し続け、自分自身で行動をコントロールできなくなる状態です。

 ◇生活破綻、家族離散

 このような物質への依存ではなく、行動自体がやめられないという病態があることが分かってきました。その一つがギャンブルへの依存です。その特徴は、人生に大きな損害が生じるにもかかわらず、ギャンブルを続けたいという衝動が抑えられない点です。自身でコントロールできない面は、薬物など物質依存と同じです。

ギャンブル依存症支援施設「グレイス・ロード甲斐センター」(山梨県甲斐市)で回復を目指す入所者=本文とは関係ありません

 勝ちを追い求めて、最後には掛け金を失いますが、そのような行為を人に隠し、貯金まで使い果たしてしまいます。次第に借金が膨らみ、窃盗や横領、詐欺行為にまで手を染めるケースもあります。最終的に生活が破綻し、家族離散や解雇など深刻な事態に至ります。

〔30代男性のケース〕

 ◇パチンコで高揚感

 私が診療した30代男性(個人情報保護のため一部改変)の症例から具体的に考えてみましょう。

 男性は運動神経がよく、高校時代にはサッカーの全国大会に出場し、スポーツ推薦で名門大学に進学しました。大学でも全国大会を目指していましたが、練習中のけがで競技が継続できなくなり、退部。そして何事にもやる気が起きず、授業もさぼりがちに。暇を持て余していたところ、友人から誘われてパチンコに行くと大当たりし、それまでに経験のない高揚感を覚えました。

 幼少時には父にパチンコ屋や競馬場によく連れて行かれましたが、大学でサッカーをやめた頃から、朝から夕方までほぼ毎日パチンコに通うようになり、講義にほとんど出席しなくなりました。負けた日は一日イライラし、次の日には負けを取り戻そうとより多額の金をつぎ込みました。

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