こちら診察室 依存症と向き合う

第5回 深刻化するゲーム依存症
ネット接続、一昔前とは別世界 ~久里浜医療センターの「今」~

 最近、電車やフードコートなどでスマートフォンでゲームをしている人をよく見かけます。そうしたゲームは、子どもや青少年にとって代表的な遊びの一つになっていますが、今の中高年世代が青少年の頃に楽しんだ電子ゲームと現代のオンラインゲームでは、依存性において別物であると考えたほうがよいでしょう。

スマホゲームを楽しむ(イメージ)【EPA=時事】

スマホゲームを楽しむ(イメージ)【EPA=時事】

 ◇際限なく楽しめる

 まずは、日本における電子ゲームの歴史を少し振り返っておきたいと思います。

 電子ゲームが一般に普及し始めたのは1970年代とされています。当時、ゲームセンターや喫茶店、そして家庭でゲームに興じた中高年の方も多いと思います。その後、ゲームは急速に性能が向上し、1990年代に入ると一般に普及したインターネットと融合し、オンラインゲームが出現しました。

 インターネットにつながっていないオフラインのゲームは、その内容や対戦相手に限りがあったので、ある程度のところで飽きてやめることが比較的容易でした。これに対し、オンラインゲームはゲーム開発会社などが次々とストーリーや舞台などを追加し、対戦相手もオンライン上で選べるため際限なく楽しめる特性を持っています。

 ◇依存症の診断基準

 またゲームによっては、何が当たるか分からないようなギャンブル性のあるものなどに多額の課金をするケースもあります。

 こうしたことから、ゲームが強い依存性を持つようになったと考えられます。そして、2000年ごろからインターネットやオンラインゲームの依存的使用に関する報告が相次いでいます。医療の分野で依存への対処が求められるようになりますが、その際には統一的な基準が必要となります。

 ゲーム依存症の診断基準は、(1)制御困難(2)優先度が他の趣味や日常生活よりも高い(3)否定的な結果にもかかわらずゲームを継続、もしくはエスカレート-に加え、「さまざまな分野において重大な障害をもたらし、原則として12カ月以上これらの症状が続く」とされています。

スマホゲームを楽しむ若者(イメージ)【AFP=時事】

スマホゲームを楽しむ若者(イメージ)【AFP=時事】

 ◇昼夜逆転、引きこもり

 「重大な障害」の例として青少年の場合は、繰り返される遅刻や欠席、不登校、進級失敗、ひきこもり、家族との深刻な対立、孤立などが挙げられるでしょう。長期間引きこもってしまうことで、将来に多大な影響を与えてしまうことも想定されます。

 ゲームの依存的使用は、膨大な時間を費やすなどさまざまな悪影響を伴います。重症になると就寝時刻の遅延や昼夜逆転といった「生活の乱れ」、不登校や引きこもりなど「社会的不参加」を起こしやすくなるほか、精神症状が悪化し、精神疾患や発達障害を合併しやすいことが知られています。

 合併しやすい疾患には注意欠如多動性障害(症)、社会恐怖症、うつ病、強迫性障害などが挙げられています。合併する症状に応じた治療も行われます。また依存症の治療にはさまざまな心理・精神療法が用いられ、有効性が報告されていますが、認知行動療法=用語解説=を通じた治療報告が比較的多いとされています。

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