黒川一郎 医師 (くろかわいちろう)

明和病院

兵庫県西宮市上鳴尾町4-31

  • 皮膚科、にきびセンター
  • 皮膚科部長、にきびセンター長

皮膚科

専門

尋常性ざ瘡、ざ瘡関連疾患の病態解明、皮膚腫瘍におけるケラチン発現、皮膚科領域感染症

黒川一郎

黒川一郎医師がにきびの治療、研究に専念してから30年になる。大学で恩師の朝田康夫先生(関西医科大学名誉教授)、西嶋攝子先生(西嶋皮膚科院長)と出会い、そこで教室のテーマの1つであったにきび桿菌(Propionibacterium acnes:P.acnes)の研究をすることになった。これが黒川医師のにきび研究の第一歩であり、きっかけでもある。入局した年の夏に、岐阜大学医学部嫌気性実験施設に嫌気性菌の培養の手技を習いに行った。「猛暑の中、午後の実習はクーラーもない。実習室に氷柱を立て、汗まみれで悪戦苦闘した一週間でした」(黒川医師)
この39.4℃の最高気温を記録した夏に、過酷ともいえる実習に励んだことが、現在のにきび治療への熱意につながっている。その後、黒川医師は多数のにきび患者の診察に当たり、その病因である角化、細菌、皮脂、内分泌因子、免疫の多方面より幅広い分野の研究を行ってきた。
「従来のにきびの治療といえば、経験に基づいた様々な治療が行われており、標準的な治療がなく、医療の現場が混乱している状況でした」(黒川医師)
そこで2008年、日本皮膚科学会が尋常性ざ瘡治療ガイドラインを公表。黒川医師は策定委員としてガイドラインの作成に携わった。さらに、海外の著者とにきびに関する総説をまとめたり、化膿性汗腺炎(にきびの重症型)のMedical & Scientific Advisory Boardの日本で唯一のメンバーとして国際的に活躍している。また皮膚上皮性腫瘍に関して、細胞骨格のケラチン発現とその意義というテーマでケラチンの権威であるRoland Moll教授(マールブルグ大学病理学)と総説にまとめた。
感染症の分野では嫌気性菌感染症ガイドラインの作成、黄色ブドウ球菌、にきび桿菌の耐性遺伝子の解明、帯状疱疹後神経痛のリスクファクター、日本紅斑熱の皮膚からのPCR(DNA複製)による早期診断などの実績がある。

診療内容

にきびは「青春のシンボル」として考えられ、これまでは病気としての認識がきわめて低かった。しかしながら「たかがニキビ、されどニキビ」と言われるように、放置していると症状を悪化させるケースもある。
にきびの皮疹は面皰(めんぽう)(コメド:comedo)という皮疹から始まる。面皰には2種類。毛穴の開いた黒にきび(開放面皰)と毛穴が閉鎖している白にきび(閉鎖面皰)がある。ところが、にきびは実際には肉眼的に見えない微小面皰という状態からすでに始まっている。肉眼では見えない段階からすでに約30%の毛包で角化が起こっていると考えられているのだ。
面皰に続いて、炎症性皮疹に進展すると赤い丘疹となって、一部、黄色い膿疱という状態に移行する。丘疹、膿疱の毛包壁が破れると、皮下膿瘍を形成し、毛、角質などの異物が真皮に出ると肉芽反応が起きて、瘢痕、ケロイドが形成される仕組みだ。また、閉鎖面皰の毛包壁が拡張すると嚢腫が形成される。
にきびの病因は一般に次の4つの因子(皮脂・内分泌的因子・角化・細菌と炎症)が重要と考えられている。
(1)皮脂分泌の亢進、(2)内分泌的因子(男性ホルモンなど)、(3)毛包漏斗部の角化異常、(4)にきび桿菌(P.acnes)などの細菌の増殖とそれによる炎症。
これまで数多くの症例を経験し、治療を行ってきた黒川医師によると、にきびで医療機関を受診する患者は約10%であり、病気としての認識がきわめて希薄。
「治療をしないで放置していると瘢痕、ケロイドといった治療が難しい病変に移行することがあります」(黒川医師)
同院では2011年7月に日本初の「にきびセンター」を開設し、にきびの治療に当たっている。「科学的根拠に基づく集学的治療」、「発症機序の解明」、「発症予防の研究と啓蒙」の3つを目的としている。そこでは新規治療の過酸化ベンゾイルを初め、アダパレン、抗菌剤の内服、外用などの薬剤治療を始め、面皰圧出などの理学療法、形成外科の手術療法、レーザー治療を行うなど、集学的治療が行われている。
にきびセンターの集学的治療は、1)黒川医師のカウンセリング、2)洗顔指導(看護師)、3)薬物療法・理学療法・ケミカルピーリング(医師・看護師)、4)イオンフォトレーシス(看護師)、5)薬剤指導(薬剤師)、6)栄養指導(管理栄養士)の手順で展開される。
医師・看護師・薬剤師・栄養士等の専門職によるチームアクネの連携体制は、患者がゆっくりと自分の症状を相談することができ、にきびや健康についてアドバイスがもらえると好評。患者にとっては「一緒ににきびを治して行くんだ」という意識づけにもなるようだ。
「多職種が総合的ににきび患者を支え合い治療に取り組み、患者の生活の質(QOL)を改善することがセンターの、そして私自身の使命です」(黒川医師)
にきびは治療開始が遅れると瘢痕が重度になると言われている。また瘢痕は炎症の深さと時間が関係し、炎症症状が長く、ゆっくりと続くと瘢痕を形成しやすいと考えられている。瘢痕、ケロイドになるとなかなか有効な治療がないのが現状。したがって、炎症症状の早期治療が瘢痕形成予防で最も重要であると考えられている。

医師プロフィール

1983年 関西医科大学 卒業
1986年~1988年 ドイツ・ベルリン自由大学留学
1988年 関西医科大学大学院(皮膚科学)卒業
1988年~1989年 関西医科大学皮膚科助手
1989年~1992年 済生会中津病院皮膚科医員
1992年~2005年 兵庫県立塚口病院皮膚科医長・部長
2005年~2010年 三重大学医学部皮膚科講師、助教授、准教授
2011年 明和病院皮膚科部長・にきびセンター長、兵庫医科大学臨床教育教授
2016年 明和医学研究所所長