村上正人 医師 (むらかみまさと)

山王病院

東京都港区赤坂8-10-16

  • 心療内科
  • 部長

心療内科 内科

専門

慢性疲労、慢性疼痛、心療内科学、リウマチ学・呼吸器病学、心身医学的治療法、交流分析療法、漢方療法

村上正人

村上正人医師は慢性疲労や慢性疼痛の治療と研究に取り組んでいる。病歴から発症の背景にある身体的、心理社会的要因を解析し病態の解釈と診断を行う。ストレスに対する感受性や対処能力、社会的スキルや問題解決能力などを探り、全人的、総合的治療を心掛けている。必要に応じて臨床心理士によるカウンセリングを導入。認知行動療法や交流分析療法で有効なストレス対処法を身につけ、自律訓練法で自分をリラックスできる技術を修得するなど、心身の両面から慢性疲労、慢性疼痛へのアプローチを試みている。

診療内容

原因がはっきりせずなかなか良くならない病気を抱えている場合、その背景にはストレスが原因として潜んでいることがある。当科は感情が体の症状として表れる心身症を扱い、身体的な面と心理的な面の両面から患者をみていく。
心療内科については「精神科まではいかないけれど、その手前を診てくれるところ」そんなイメージをもっている人もいるだろう。しかし心療内科とは、文字通り内科であり、内科全般と内科系専門分野でトレーニングを積んだ医師が、身体面の医学を基礎として診療を行う。内科には循環器科内科、消化器内科、呼吸器内科などの専門科があるが、心療内科もそのひとつであり、人間の健康や病気を、心と体の両面から取り組んでいくのが心療内科である。
当科が扱う疾患は、気管支喘息、線維筋痛症、過敏性腸症候群、頭痛、めまいなど各臨床領域にわたる心身症、身体疾患に伴ううつ病や不安障害など、多岐にわたる。
その中でも、ひどい疲れが半年以上続く慢性疲労症候群(CFS)は、ストレスの多い現代社会でクローズアップされてきた原因不明とされる疾患のひとつである。慢性疲労症候群は1980年代に米国などで注目されるようになった。日本ではおおよそ1,000人に3人の割合で、この病に苦しむ人がいるとの統計もある。そのうち約60%が女性だといわれる。厚生労働省が定めた診断基によると、生活を著しく損なうような強い疲労が半年以上続き1カ月のうち数日は仕事を休むなどの状態があらわれると慢性疲労症候群を疑う必要がある。詳しい病因や治療方法はいまのところ完全にはつかめていないが、ウイルスやストレスとの関連性も指摘されており、発熱、リンパ節腫脹、非滲出性咽頭炎、筋肉・関節痛などの身体所見が重要である。
この病気が患者にとってやっかいなのは、医師の診察や検査を受けても異常が見つからないうえ、周囲から「気持ちの持ちよう」「怠け者」などと誤解されやすいこと。
「慢性疲労症候群はうつ病や自律神経失調症と似通った症状を呈するため鑑別が難しいことも多い。慢性疲労症候群は独立した疾患概念と理解していますので、当科では、きちんとした診断基準によって評価をしています」(村上医師)
また慢性疲労症候群の患者は、感情の認知や的確な表現が失われている失感情症、疲労や空腹などを十分に認知できず、体の声を聞くことができない失体感症を抱えていることが多い。
当科で扱う心身症とは、身体疾患の中でも発症や経過に心理社会的ストレス要因が大きく関与する病態を指している。慢性疲労症候群に対しても、一般的な内科的治療に加えてストレスを軽減し体の恒常性を回復させるための心身医学的な治療を行う。抗不安薬や抗うつ薬、自律神経調整薬、漢方薬などを組み合わせて使いながら、ストレスの原因となる環境、対人関係、個人のパーソナリティーの問題、ストレスに対する感受性などを考慮に入れた治療を行う。心理面へのアプローチが必要とされたときは、臨床心理士などの心の専門家との共同診療体制を組むこともある。ケースによっては、カウンセリング、交流分析療法、自律訓練法、認知行動療法をとりいれる。
治療はまず、患者の話をじっくりと聞くことから始まる。患者の症状やストレスは多様であるため、あらゆる角度からアプローチするため初診には充分時間をかける。最初に臨床心理士が生活歴や現在の社会環境、家庭のことなど、患者のバックグラウンドを知るため、30分程度かけて話を聞き、それをもとに医師が診察をする。そのため、病気の原因がどのようなストレスなのか、初診時である程度のところまで評価することができる。村上医師は常に、どういうストレスが、どのような体の症状につながっていくか、逆に体がどんなふうに病むと、心がどのような影響を受けるかという「心と体の関係性」を頭のなかに入れて診察を心がけるという。親子関係や、会社での立場や人間関係など患者の多種多様な悩み事と症状が関係があるのかを確かめながら、患者のストレスに対する感受性や対処能力、社会的スキルや問題解決能力など探る。また症状に対する投薬治療のほか、心身学的なアプローチとして専門的な心理療法や、カウンセリングを行う。カウンセリングにおいては、患者の話に傾聴し、“受容・共感・支持・保証”という理念にもとづいて治療をすすめる。
苦痛の存在を受け入れ、苦しみに共感し、闘病期間をサポートし、しっかり治療に取り組むと保証する。これらを踏まえて行うのが正しい心身医学的治療の方法であり、当科の診療スタイルである。
このほか専門的心理療法のひとつである「認知行動療法」で、認知のゆがみを修正して、より建設的な方向に行動できるよう、ストレスに対する新たな対処法を身につけられるよう促す。「交流分析療法」でストレス状態に陥りやすい自分の行動パターンや考え方、こじれた人間関係を修復し、新しい生き方を発見する。「自律訓練法」によりリラクゼーションを通して心身のバランスをはかるなど、専門的な指導もカウンセリングのなかに盛り込んで、患者の心と体の負担を軽くする手助けを行う。

医師プロフィール

1976年3月 日本大学医学部 卒業
1982年~1985年 米国クリーブランドクリニック研究員
2011年 医学部呼吸器内科学分野診療教授
2012年 本大学板橋病院心療内科部長
2015年 山王病院心療内科部長