絨毛がん〔じゅうもうがん〕 家庭の医学

 大部分は妊娠性絨毛がんで、正常妊娠分娩(ぶんべん)・流産・胞状奇胎(ほうじょうきたい)などのあと、胎芽成分である絨毛細胞が、子宮や周囲臓器、または肺などの他臓器に残って潜伏中にがん化して発生します。発生頻度は減少傾向が続いており、まれながんになってきました。
 化学療法(抗がん薬治療)にきわめて良好な感受性を示します。治療効果判定には、CT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査のほか、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というマーカー(妊娠反応で調べる物質です)が低下しているかどうかも重要な指標となります。病巣の病理診断がむずかしい場合には、発生機転(先行する妊娠がなにか、先行妊娠から発症までの期間など)や病巣のひろがりなどの検査所見などからスコアを計算して、がんか否かを臨床的に診断することがあります。

[症状]
 妊娠反応が陽性である(hCG増加のため)若年女性の不正性器出血です。経腟超音波(エコー)検査で、通常の妊娠・流産とは異なり、子宮内に胎児のふくろ(胎嚢〈たいのう〉:GSといいます)が見られないため、異所性妊娠(子宮外妊娠)との区別が重要です。

[治療]
 抗がん薬にきわめて良好な感受性を示し、複数の抗がん薬を用いて治療がおこなわれます。抗がん薬により大部分の患者は治ります。治療効果判定には、CT検査などの画像検査のほか、hCGが低下しているかどうかも重要な指標となります。抗がん薬が効きにくい場合には、手術療法が必要となることがあり、その場合は子宮、卵巣、肺など、病巣に応じた手術となります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔統合ゲノム学〕 織田 克利)
医師を探す