薬物性肝障害〔やくぶつせいかんしょうがい〕

 薬物が原因で起こる肝臓病を薬物性肝障害といいます。最近は分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など新たな作用機序の薬剤が多数登場し、薬物性肝障害の実態は変化しています。
 薬物性肝障害は一般型と特殊型に分類され、一般型には、投与されたすべての人に肝障害を発症する中毒性と、一部の人にのみ発症する特異体質性があり、特異体質性は代謝性特異体質とアレルギー性特異体質に区分されます。特殊型にはHBV(B型肝炎ウイルス)の再活性化のような内在性病原体の再活性化や免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)としての肝障害などが含まれます。
 中毒性の肝障害は、自殺目的でアセトアミノフェンを大量内服して発症する肝障害が代表的です。欧米では急性肝不全の成因として重要ですが、わが国ではあまり多くありません。早期にアセチルシステインを投与し、人工肝補助療法をおこなえば(急性肝不全の項参照)、予後は比較的良好です。
 代謝性特異体質の肝障害では、肝臓での薬物の代謝に個人差があり、特定の人でのみ、薬やその代謝産物によって肝臓の細胞に障害が起こります。以前は結核の治療薬であるイソニアジドが代表的でしたが、最近では悪性腫瘍の治療に用いる分子標的薬による症例が増加しています。特にレゴラフェニブを用いた場合の肝障害が重篤になります。
 アレルギー性特異体質の肝障害では、薬やその代謝産物などが異物と認識されて、肝臓の細胞が免疫反応に巻き込まれて障害されます。このためこの機序の薬物性肝障害では、アレルギーに関連する好酸球が末梢血中で増加したり、原因となる薬物を用いたリンパ球刺激試験が陽性になったりします。また、治療では免疫を抑えるために、重症化した場合には副腎皮質ステロイドが投与されます。最近ではサプリメント、漢方薬、OTC市販薬などによる症例が増加しています。
 特殊型で重要なのは、HBV再活性化による肝障害と、免疫チェックポイント阻害薬によるirAEとしての肝障害です。免疫抑制療法や抗がん薬を用いた化学療法によるHBV再活性化は、肝障害が生じると特に予後不良であり、ガイドラインを遵守して予防する必要があります(慢性肝炎の項参照)。いっぽう、irAEの肝障害は増加傾向にあり、特にPD-1抗体とCTLA-4抗体を併用する治療で重症化することが知られています。

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