肝膿瘍〔かんのうよう〕 家庭の医学

 肝臓に病原体が感染して、膿(うみ)のたまった袋のような腫瘤ができる病気です。熱が出て、右上腹部に疼痛(とうつう)がみられます。こぶしで体表から軽くたたくと、痛みが強くひびきます。超音波検査、CT、MRI検査で肝膿瘍に特徴的な腫瘤が観察され、これら症状がみられる場合は、超音波検査下で腫瘤に針を刺して、膿が吸引できれば診断が確定します。
 肝膿瘍の原因は、赤痢アメーバの場合と、細菌の場合があります。細菌が原因の場合は、その肝臓に至る経路で、胆管経由と門脈経由に分類されます。胆管経由の場合は、胆嚢(たんのう)炎、総胆管結石などが原因で、腸管内の細菌が胆道を逆行性に、肝臓に感染します。門脈経由の場合は、虫垂炎(盲腸炎)、大腸憩室炎など腸の感染症が原因で、腸管内の細菌が血流に沿って感染します。しかし、あきらかな病変がない場合も多く、糖尿病などの場合に肝膿瘍が好発します。
 治療は膿瘍に針を刺して、挿入したカテーテルで膿を抜くことと、感染した病原体に応じた抗菌薬を投与することです。また、胆道系、腸管などの原因となる病気の治療もおこないます。

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