肝嚢胞、肝血管腫〔かんのうほう、かんけっかんしゅ〕 家庭の医学

 超音波検査などの画像診断で、肝臓に高頻度で見つかる良性の腫瘤です。いずれも肝がんの診断に際して、区別することが重要となる腫瘤です。
 肝嚢胞は、肝臓内の胆汁を流す細い胆管などがうまくつながらないで、液体がたまった腫瘤です。健康な人でも、5~10人に1人には見つかります。大部分は超音波検査で診断を確定できますが、CTやMRI検査が必要の場合もまれにあります。特に治療の必要はありません。しかし、大きかったり、多発していたりして、腹部がはる、にぶい痛みがあるなどの症状がある場合は、超音波検査で見ながら針を刺して、内部の水を抜くことがあります。
 肝血管腫は細い血管がとぐろを巻いている良性の腫瘍です。皮膚にできる「赤あざ」と同じものです。健康な人でも20人に1人ぐらいの頻度で見つかります。超音波検査で典型的な所見があれば、それ以上の検査をおこないませんが、慢性肝炎肝硬変などの患者さんで肝細胞がんとの区別が重要となる場合には、造影剤を用いたCT検査、MRI検査などをおこなって診断を確定します。乳児にきわめてまれにみられる巨大な血管腫は、血液が固まる反応の異常などが起こることがあり、その場合は治療の対象になります。しかし、成人に発見される血管腫は、診断が確定したあとは特に治療する必要がありません。