健康な結婚生活 家庭の医学

■結婚前の健康診断
 一時期、性行動が若年化、活発化してきたといわれていましたが、近年は逆に性に対する草食化が指摘されてきています。しかし、いまだ10歳代後半から20歳代の若い女性の性感染症の罹患(りかん)率は高く、子宮頸(けい)がんも30歳代にピークをみとめます。男性と違ってからだの奥に性器がある女性は性感染症にかかっても無症状であることも多く、女性の性感染症は深く静かに潜行し、それが異所性妊娠の原因となったり、不妊症へとつながることもあります。また、妊娠中の胎盤や出産時の産道を介して新生児に感染して、次世代に原疾患をはじめ、結膜炎、髄膜炎肺炎などのさまざまな病気を起こすこともあります。
 結婚は人生において一つの大きな節目です。結婚後の人生をよりよいものにするために自分のからだや健康についても考えるよい機会でしょう。最近は「プレコンセプションケア」という考えかたから小児期から結婚までのこころとからだの健康に留意して、生涯にわたりよりよい状態で過ごすためのチェックや対応が進められています。妊娠時の感染で胎内の子どもの健康障害を起こす可能性のある風疹の抗体価の測定や陰性の場合のワクチン接種、早産や妊娠高血圧症候群などとの関係が指摘されている歯周病などのチェック(歯科検診)や治療もその一例です。結婚前には全体の健康状態をチェックする目的で健康診断を受けることをおすすめします。医療機関によってはブライダルチェックと称して健康診断のメニューを組んでいるところもあります。内容は医療機関によって異なりますので問い合わせてみてください。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子