風疹(rubella)・先天性風疹症候群〔ふうしん(るべら)・せんてんせいふうしんしょうこうぐん〕 家庭の医学

 風疹(rubella)は、発熱、発疹(ほっしん)、リンパ節腫脹を特徴とする疾患で、風疹ウイルスに感染後14~21日(平均16~18日)の潜伏期を経て発症します。おもな症状は、発疹、リンパ節腫脹(特に頸〈けい〉部、後頭部、耳介後部)、発熱です。通常、予後(病気の経過についての見通し)は良好で、3日程度の経過で自然治癒しますが、まれに血小板減少性紫斑病脳炎などの合併症を起こすことがあります。
 風疹の発疹は紅色の斑状丘疹(きゅうしん)で、全身に出現し、3日程度の経過で消褪(しょうたい:症状が消えてなくなること)します。

 先天性風疹症候群は、風疹ウイルスの胎内感染によって先天異常を起こす感染症です。免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群(CRS:congenital rubella syndrome)を起こします。先天異常としては白内障、先天性心疾患、難聴が有名ですが、そのほかにも先天性緑内障、色素性網膜症、小頭症、精神発達遅滞などがみられる場合もあります。先天異常の発生は妊娠週齢と関係し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週をすぎるとほとんどなくなるといわれています。また。先天性風疹症候群で出生した児は、長期間にわたって風疹ウイルスを排泄し、感染源となりうるので、感染防止対策にも留意する必要があります。
 予防には弱毒生ワクチンである風疹ワクチンの接種が有効で、現在1歳児と5歳以上7歳未満で就学前1年間の幼児を対象に、麻疹(ましん)風疹混合ワクチンを用いた2回の定期接種がおこなわれています。また、風疹含有ワクチンを未接種もしくは1回しか接種していない成人(特に妊娠する可能性のある女性およびそのパートナー)は、風疹含有ワクチンを接種して免疫をつけておくことが重要です。通常は2回の接種で十分な免疫ができるはずです。

【参照】子どもの病気:風疹

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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