母乳の与えかた 家庭の医学

■母乳が出るようにするには
 母乳が出るようにするには、妊娠中の乳房の手入れが大切です。与えるときには、赤ちゃんを横抱きにして、しっかりと安定した状態で乳輪までしっかりと含ませます。最初のうちは出なくとも、赤ちゃんが吸ううちに刺激を受けてたくさん出るしくみがありますので、あきらめずに吸わせてあげてください。たくさん出るようになると、赤ちゃんは最初の5分間で大部分を吸い終わり、あとはのんびりと遊び飲みをして満足して終わります。
 10分も授乳するとほとんどの赤ちゃんは飲みきりますが、吸う力の弱い赤ちゃんやゆっくりペースの赤ちゃんの場合には、15分程度かけてもよいでしょう。それ以上時間をかけても、母子ともに疲れるだけですので、終わりにして、空腹になったら授乳します。

■授乳の間隔
 新生児期には2時間程度でおなかがすきますが、だんだん時間があき、1カ月健診を終わるころには3時間程度はあくようになります。夜間はだいたい2回は授乳が必要で、しだいに1回になってきます。1日に必要な授乳の回数は個人差があり、体重増加が順調であれば、回数にこだわる必要はありません。

■授乳時の抱きかた
 あまり水平だと飲みにくいので、頭を多少上げた位置にします。飲ませたあとは、しばらくは肩に赤ちゃんの頭をもたせかけて、ゲップを出させる必要があります。飲ませたあと、すぐに寝かせると赤ちゃんの胃と食道の境がゆるいためと、胃が垂直位のために逆流しやすく、飲ませた分を大量に吐くことになります。
 授乳は赤ちゃんにとって親の愛情を全身で感じる時間です。テレビを見ながら、携帯電話を片手になどの「ながら授乳」は、親のほうから子の信頼感をこわしていることになります。顔を見てやさしく話しかけながら授乳することは、子どもの心身の発達にとても大切なのです。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 桃井 眞里子)
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