[原因]
麻疹ウイルスの感染が原因で、空気・飛沫(ひまつ)・接触感染経路によって鼻やのどから入ります。伝染力は非常に強く、患者のそばに行くと、まだ麻疹にかかっていない人はほとんど感染します。体外ではウイルスは不安定で早く死ぬので、第三者の器物を通して伝染することはほとんどありません。母親由来の免疫によって生後6カ月未満はみられません(母親が麻疹にかかっていなければ、生後6カ月未満でも感染します)。好発年齢は生後6カ月から2歳です。予防接種により患者数は激減し、2015年にはWHO(世界保健機関)により、日本が麻疹の排除状態であることが認定されました。排除後は海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例のみです。一度かかると一生免疫が得られます。
[症状]
潜伏期は10~12日です。感染源となる期間は、発病前3~4日から発疹(ほっしん)出現後2~3日です。
カタル期…発熱、鼻水、くしゃみ、せきのほか、目の充血や目やにが出て、まぶしがったりします。2~3日すると、口中の奥歯に近いほおの粘膜に小さな白い斑点がみられます。これはコプリック斑といわれ、麻疹の診断に有用で、これがあらわれて2~3日すると麻疹の発疹が出てきます。
発疹期…体温は一時すこし下がりますが、再上昇すると同時に発疹があらわれます。発疹は耳のうしろから顔面、胸や背中、おなか、さらに手足へとひろがります。1~5mm程度のやや盛り上がった紅色の発疹は、たがいにくっついて地図のようになる部分もあります。日がたつと暗赤色になります。せきや鼻水、目やにはさらにひどくなります。
回復期…発疹出現後、3~4日で解熱しほかの症状も軽快してきます。発疹は褐色の色素沈着をしばらく残し、こまかく皮がむけます。5~6日で全快します。
合併症…
中耳炎、
肺炎、クループ、
脳炎などがあります。特に肺炎、脳炎は、生命にかかわることがあります。
[検査]
肺炎が疑われるときは、胸部X線検査をします。脳炎が疑われるなら、頭部MRI(磁気共鳴画像法)検査をおこないます。血液検査で白血球は減少しますが、逆に高かったり、炎症反応を反映するCRPというたんぱくが高ければ、2次的な細菌感染の合併を考えます。ウイルス抗体価の上昇があれば、診断が確定します。
[治療]
麻疹のウイルスを直接やっつける薬はありません。2次的に細菌感染が起こったときは、抗菌薬を用います。症状をやわらげる対症療法が中心で、たんを出しやすくする薬をのんでもらいます。合併症があれば、それぞれの治療を開始します。
現在では、麻疹の死亡率は0.1~0.2%にまで低下しています。また2010年5月以降、土着株の麻疹ウイルスは検出されていません。しかし、毎年、輸入例による集団発生が報告されています。そのため、予防接種をすることが大切です。麻疹ワクチンは、毒性の弱い生ワクチンで1歳から受けることができます。注射後8~10日くらいに、副作用として発熱や発疹をみることがあります。感染後3日以内にワクチンをおこなえば、防御も可能です。
ほかの予防法としては、感染後6日以内に免疫グロブリンを注射する方法があります。この方法で発病しなかった場合は、まだ免疫は得られていないので、その後感染する危険性は有しています。なお、麻疹は学校感染症に指定されており、解熱したのち3日を経過するまでは登校(園)停止です。
【参照】感染症:
麻疹
(執筆・監修:
自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光)
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