肺膿瘍、肺化膿症〔はいのうよう、はいかのうしょう〕

 肺膿瘍と肺化膿症は、ほぼ同じ意味で使われます。これは、肺炎などの感染によって肺の一部の組織が死んでしまい(壊死〈えし〉)、その場所に膿(うみ)がたまって空洞ができる病気です。
 原因となる菌は、ふだん口の中にいる菌(口腔〈こうくう〉内常在菌)や空気を嫌う菌(嫌気性菌)であることが多く、むし歯や歯周病のある人や高齢で飲み込みがうまくいかず食べ物などが気管に入りやすい人(誤嚥〈ごえん〉しやすい人)、からだの抵抗力が弱っている持病のある人に多くみられます。

[症状][診断]
 せき、胸の痛み、膿のようなたん(時にくさったようなにおいがする)などの呼吸器症状に加えて、発熱、だるさや食欲の低下といった全身の症状がみられます。
 血液検査では、白血球の数がふえたり、CRPという炎症の値が高くなるなど、からだに炎症が起きていることがわかります。胸部X線や胸部CT検査では、肺に空洞を伴った炎症による影がみられ、その空洞内に膿がたまっていることもあります。
 原因となっている菌を調べるために、たんや血液を使った培養検査をおこないます。

[治療]
 治療には、肺炎などの一般的な感染症と同じように抗菌薬(抗生物質)を使います。ただし、膿がたまっている部分(空洞や膿瘍)には薬が届きにくいこともあるため、通常の肺炎よりも治療期間が長くなることがあります。
 薬の効果が十分でない場合には、気管支鏡という検査で、がんやカビの感染、結核などの病気が隠れていないかを調べます。そのうえで、たまった膿を外に出す処置(膿を抜く処置:ドレナージ)や、必要に応じて外科的手術をおこなうことも検討します。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 非常勤助教〔呼吸器内科学〕 大倉 真喜子)
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