肺真菌症〔はいしんきんしょう〕
肺にカビである真菌が感染して炎症性病巣が形成され、さまざまな呼吸器症状がみられる一群の病気を肺真菌症と呼びます。
病気の原因となる真菌には、アスペルギルス、クリプトコッカス、カンジダ、ムコールなどがあります。
通常、健康な人にこれらの真菌が感染することはまれで、多くは感染に対して免疫力が低下している人や、もともと肺にあった病巣に、これらの真菌が感染し症状をもたらします。しかし、クリプトコッカスは、ハトの排泄(はいせつ)物を含んだ土壌におり、それを吸入した場合に健康な人でも感染することが知られています。
[症状][診断]
症状は病原体や病巣のかたち、ひろがりにより異なります。肺に病巣があっても症状がまったくみられなかったり、発熱、せき、血たん、喀(かっ)血や時には胸部痛などが出現し、日常生活にも支障をきたすようになる例もあり、病状はさまざまです。
診断をするには、どのような菌が病原体となっているのかを見つけ出すことがもっとも重要です。そのために、病巣が肺のどこにあり、どのようなかたちをしているかを知る目的で胸部単純X線検査をします。
また、肺がん、結核、肺炎、肺膿瘍(はいのうよう)といったほかの病気と鑑別するためや、病原体を見つけるための検査に参考となる胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査も必要となります。喀たん検査で菌が見つかれば診断は容易です。
しかし、通常はなかなか検出できないため、気管支鏡を使用して肺の病巣部から採取したものを調べることになります。これらの検査によっても菌が見つからず診断ができない場合には、胸腔(きょうくう)鏡検査や開胸手術による肺生検をすることもあります。さらに、それぞれの菌に特有の免疫反応が血液中にあらわれることもあるので、診断の参考情報としての意味合いから血液検査は不可欠です。
[治療]
治療は抗真菌薬を使用します。症状が重かったり病巣が広い範囲にある場合には、点滴で薬剤を全身的に行きわたらせる治療法が必要です。内服や点滴では薬剤が病巣に到達しがたいと考えられる場合には、薬剤を吸入したり、直接病巣に薬剤を注入したりすることもあります。
また、病巣が限られた狭い範囲にあり喀血症状が持続するような場合には、手術でその病巣部を切除することもありますが、その場合にも薬剤による治療をときどき併用します。病状が軽い場合には通院でも治療可能ですが、血たん症状が強いときや病気が悪化傾向を示す場合には入院治療する必要があります。
この病気にかかる人は免疫力の低下が背景にあるので、かぜなどの感染には注意しなければなりません。
以下、代表的な肺真菌症について簡単に触れておきます。
■肺アスペルギルス症
本症の原因菌としてはアスペルギルス・フミガータスがもっとも多くみられます。アスペルギルスに対する免疫反応により発症するアレルギー性気管支肺アスペルギルス症という病気があります。ぜんそく症状、せき、たん、血たんなどの症状がみられ、胸部X線検査では肺に肺炎様や筒状の影が観察されます。アスペルギルスが古い肺結核の空洞に侵入し発育して球状の病巣を形成したものを肺アスペルギローマと呼んでいます。また、結核の空洞がないのにボール状の真菌のかたまりができてくる例は、侵襲性アスペルギローシスと呼んで区別しています。
通常は無症状のことが多いのですが、経過するうちに血たん症状が出現することがあります。そのほか、白血球が少ない患者に肺炎像が出現し治療に困難をきたす急性侵襲型アスペルギルス症や、糖尿病患者などに合併する慢性壊死(えし)性アスペルギルス症があります。
■肺カンジダ症
カンジダは口腔(こうくう)や消化管に常在する菌です。抵抗力が低下したときや、抗菌薬が長期に使用されている場合に他の菌と交代するようにして肺炎をひき起こすことがあります。
■肺クリプトコッカス症
クリプトコッカスはハトなどの鳥類の排泄物中にあり、なんらかのきっかけで吸入することにより肺に病巣を形成するものです。健常人でも感染することがあります。通常は症状のないことが多いのですが、進展するとせき、たん、微熱、胸痛、倦怠(けんたい)感、体重減少など多様な症状が出現します。いずれの症状も程度は軽くて見過ごされがちです。
胸部X線検査で円形陰影として発見されることが多いため、肺がんやほかの腫瘍性の病気との鑑別が必要となります。
病気の原因となる真菌には、アスペルギルス、クリプトコッカス、カンジダ、ムコールなどがあります。
通常、健康な人にこれらの真菌が感染することはまれで、多くは感染に対して免疫力が低下している人や、もともと肺にあった病巣に、これらの真菌が感染し症状をもたらします。しかし、クリプトコッカスは、ハトの排泄(はいせつ)物を含んだ土壌におり、それを吸入した場合に健康な人でも感染することが知られています。
[症状][診断]
症状は病原体や病巣のかたち、ひろがりにより異なります。肺に病巣があっても症状がまったくみられなかったり、発熱、せき、血たん、喀(かっ)血や時には胸部痛などが出現し、日常生活にも支障をきたすようになる例もあり、病状はさまざまです。
診断をするには、どのような菌が病原体となっているのかを見つけ出すことがもっとも重要です。そのために、病巣が肺のどこにあり、どのようなかたちをしているかを知る目的で胸部単純X線検査をします。
また、肺がん、結核、肺炎、肺膿瘍(はいのうよう)といったほかの病気と鑑別するためや、病原体を見つけるための検査に参考となる胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査も必要となります。喀たん検査で菌が見つかれば診断は容易です。
しかし、通常はなかなか検出できないため、気管支鏡を使用して肺の病巣部から採取したものを調べることになります。これらの検査によっても菌が見つからず診断ができない場合には、胸腔(きょうくう)鏡検査や開胸手術による肺生検をすることもあります。さらに、それぞれの菌に特有の免疫反応が血液中にあらわれることもあるので、診断の参考情報としての意味合いから血液検査は不可欠です。
[治療]
治療は抗真菌薬を使用します。症状が重かったり病巣が広い範囲にある場合には、点滴で薬剤を全身的に行きわたらせる治療法が必要です。内服や点滴では薬剤が病巣に到達しがたいと考えられる場合には、薬剤を吸入したり、直接病巣に薬剤を注入したりすることもあります。
また、病巣が限られた狭い範囲にあり喀血症状が持続するような場合には、手術でその病巣部を切除することもありますが、その場合にも薬剤による治療をときどき併用します。病状が軽い場合には通院でも治療可能ですが、血たん症状が強いときや病気が悪化傾向を示す場合には入院治療する必要があります。
この病気にかかる人は免疫力の低下が背景にあるので、かぜなどの感染には注意しなければなりません。
以下、代表的な肺真菌症について簡単に触れておきます。
■肺アスペルギルス症
本症の原因菌としてはアスペルギルス・フミガータスがもっとも多くみられます。アスペルギルスに対する免疫反応により発症するアレルギー性気管支肺アスペルギルス症という病気があります。ぜんそく症状、せき、たん、血たんなどの症状がみられ、胸部X線検査では肺に肺炎様や筒状の影が観察されます。アスペルギルスが古い肺結核の空洞に侵入し発育して球状の病巣を形成したものを肺アスペルギローマと呼んでいます。また、結核の空洞がないのにボール状の真菌のかたまりができてくる例は、侵襲性アスペルギローシスと呼んで区別しています。
通常は無症状のことが多いのですが、経過するうちに血たん症状が出現することがあります。そのほか、白血球が少ない患者に肺炎像が出現し治療に困難をきたす急性侵襲型アスペルギルス症や、糖尿病患者などに合併する慢性壊死(えし)性アスペルギルス症があります。
■肺カンジダ症
カンジダは口腔(こうくう)や消化管に常在する菌です。抵抗力が低下したときや、抗菌薬が長期に使用されている場合に他の菌と交代するようにして肺炎をひき起こすことがあります。
■肺クリプトコッカス症
クリプトコッカスはハトなどの鳥類の排泄物中にあり、なんらかのきっかけで吸入することにより肺に病巣を形成するものです。健常人でも感染することがあります。通常は症状のないことが多いのですが、進展するとせき、たん、微熱、胸痛、倦怠(けんたい)感、体重減少など多様な症状が出現します。いずれの症状も程度は軽くて見過ごされがちです。
胸部X線検査で円形陰影として発見されることが多いため、肺がんやほかの腫瘍性の病気との鑑別が必要となります。
(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 助教〔呼吸器内科学〕 市川 昌子)