嚢胞性肺疾患〔のうほうせいはいしっかん〕

 嚢胞性肺疾患(以下、肺嚢胞症)は、肺内に異常な量の気腔(きこう)として形成された病気で、肺気腫と異なり肺組織の破壊はみられません。肺嚢胞症には、肺の形成過程で気管・気管支の発芽・枝分かれに異常が発生して起こる気管支(性)嚢胞と炎症や瘢痕(はんこん:きずあと)などにより胸膜の近くに発生する気腫性肺嚢胞とがあります。

■気管支(性)嚢胞
 気管支嚢胞は、そのほとんどが先天性です。発生部位によって肺内と縦隔(じゅうかく)の嚢胞に分類されます。
 肺内に発生した嚢胞は、肺内気管支嚢胞といい下葉によくみられます。縦隔内にある縦隔気管支嚢胞はわが国ではまれです。
 気管支嚢胞の内腔(ないくう)は、気道粘膜上皮でおおわれ、その壁内には気管支壁の構成成分である粘液腺、軟骨、平滑筋(へいかつきん)などが観察されます。この病気は発生異常で生じるために、心臓、肺、心膜、胸膜、食道、横隔膜などほかの臓器の異常を伴うことがあります。

[症状][診断]
 気管支嚢胞は無症状のまま、偶然に撮影された胸部X線検査で発見されることが多い病気です。症状のみられる場合には、嚢胞に近い臓器が圧迫されて生ずる症状か、嚢胞内に生じた感染による症状です。太い気管支が圧迫されると呼吸困難やせき、喘鳴(ぜんめい:呼吸するときのゼーゼーいう音)のみられることがあります。食道の圧迫では、物を飲み込みにくくなる症状があらわれます。
 また、気管支を圧迫したときには、気管支炎の症状が頻繁に起こったり、時には無気肺に至ることもあります。感染した嚢胞の内容物が嚢胞壁の破綻により縦隔や近くにある気管支内へ流出し、膿(のう)性たんや血たんをもたらすこともあります。
 胸部単純X線写真で、辺縁明瞭な円形の均等影が太い気管支の近くの縦隔や肺の中に観察されればこの病気を疑います。病変部と気管支との間に孔があいて交通路が形成されると、嚢胞内に鏡面形成(ニボー)が観察されます。胸部中央にある嚢胞では、食道造影によって、食道が圧迫されている像が観察されることがあります。
 胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査では、嚢胞の正確な位置、隣接臓器や器官との関係、嚢胞内容物の性質を推測することが可能です。
 診断を確定するためには、外科的切除した組織での病理学的検索が必要です。

[治療]
 原則的には外科的に切除します。切除後は良好な経過をたどります。

■気腫性肺嚢胞
 気腫性肺嚢胞とは、肺内の異常に拡大した気腔病変を指します。これに属する病変としては、ブラ(bulla:直径1cm以上)、ブレブ(bleb:直径1cm以下)のように胸膜直下にみられる気腫性嚢胞や、片肺の3分の1以上を占める巨大気腫性嚢胞があります。
 ブラとブレブはいずれも胸膜直下に形成された嚢胞です。それらが胸膜内のいずれに位置しているかで異なった名称がつけられますが、臨床的な違いはありません。これらの病変は、胸膜直下に生じた炎症性変化によって局所的な力が加わり肺が伸び、空気が一方通行によって貯留していくチェックバルブ(check valve)機構によって異常に拡大した空隙が形成されたものと考えられています。

[症状][診断]
 一般的には無症状であり、検診などの胸部X線検査などで偶然に発見されます。しかし、嚢胞が発達し巨大となり、残存する健常肺が圧迫され縮小した場合には、呼吸困難などが出現します。また、感染の合併や嚢胞の破綻により気胸が発生することもあります。
 壁が厚く比較的大きな嚢胞であれば、胸部X線検査で検出されます。小嚢胞の検出にはCT検査が役立ちます。
 呼吸機能検査では、自覚症状と同様に嚢胞が巨大化しなければ異常はみられません。

[治療]
 感染症を合併している場合には、抗菌薬や去たん薬を使用します。肺の機能障害をもたらす巨大気腫性嚢胞は外科的切除の対象となります。
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