米国では若者を中心に電子たばこの使用が増加しており、2021年の調査では18~24歳におけるニコチン入り電子たばこの使用率は11%に達している。一方で、ニコチン摂取をやめたいと思っている人は多いが、電子たばこに対する"禁煙"支援手段はまだ整備されていない。米・Massachusetts General HospitalのNancy A. Rigotti氏らは、以前にマメ科植物由来のアルカロイドであるシチシンが紙巻きたばこの禁煙に有用であることを報告しているが(JAMA 2023; 330: 152-160)、今回、新たな二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)によって、ニコチン入り電子たばこの禁煙にもシチシンが有効かつ安全である可能性を示した。詳細は、JAMA Intern Med(2024年5月6日オンライン版)に掲載されている。(関連記事「マメ科植物由来のシチシンに高い禁煙効果」)
160例を2:1でランダム化し12週間治療
対象は、ニコチン入り電子たばこを毎日使用する一方、紙巻きたばこは現在吸っておらず、電子たばこをやめたいという意思のある成人160例(平均年齢33.6±11.1歳、女性51.9%)。2022年7月~23年2月に米国の5施設で登録し、シチシン群(3mgを1日3回、103例)とプラセボ群(53例)に2:1でランダムに割り付け、12週間の治療後さらに4週間追跡した。登録時および週1回の来院時に短い禁煙支援カウンセリングを併用した。
主要評価項目は、治療期間最後の4週間(9〜12週目)における生化学的評価(唾液中のコチニン濃度10ng/mL未満と定義)による電子たばこ禁煙継続率。副次評価項目として、主要評価に治療終了後の4週間を加えた8週間(9〜16週目)における禁煙継続率などを評価した。
禁煙継続率はプラセボの2倍
160例のうち、115例(71.9%)で過去に紙巻きたばこの使用歴(生涯喫煙数100本以上)があった。131例(81.9%)が試験を完遂した。
9〜12週目における禁煙継続率は、プラセボ群の15.1%(53例中8例)に対し、シチシン群では31.8%(107例中34例)と有意に高かった〔オッズ比(OR)2.64、95%CI 1.06~7.10、P=0.04〕。
9~16週目における禁煙継続率は、それぞれ13.2%(53例中7例)、23.4%(107例中25例)とシチシン群で高かったが、統計学的有意差は認められなかった(OR 2.00、95%CI 0.82~5.32、P=0.15)。これについて、Rigotti氏らは「サンプル数が少ないことが一因」と説明している。
人口統計学的背景、電子たばこの使用パターンおよびニコチン依存の有無、喫煙歴とシチシンの有効性との間に関連は認められなかった。
有害事象による中止は、シチシン群が4例(3.8%)、プラセボ群が3例(5.7%)だった。シチシン群で見られた主な有害事象(発生率5%超)は、異常な夢、不眠症、不安、頭痛、倦怠感だった。重篤な有害事象の報告はなかった。
これらの結果から、同氏らは「12週間のシチシン治療と行動支援の併用は、ニコチン入り電子たばこの禁煙に有効であり、忍容性も良好だった。ニコチン入り電子たばこに対する禁煙治療薬の選択肢になりうる」と結論。薬剤による電子たばこの禁煙支援手段がないという現状に照らし、長期の大規模試験により今回の結果を検証していくことの意義を強調している。
(小路浩史)