米・University of Michigan Medical SchoolのJoyce M. Lee氏らは、米国における薬剤処方データベースを調べた結果「2020~23年にGLP-1受容体作動薬を処方された青年(12~17歳)および若年成人(18~25歳)の数は約7倍に増加した」とJAMA(2024年5月22日オンライン版)に報告している。

IQVIAのデータベースから全米の薬局の処方データを収集

 GLP-1受容体作動薬は当初、2型糖尿病治療薬として承認され、その後、体重管理(肥満症治療)薬としても承認された。セマグルチドが肥満症治療薬として承認された2021年には、GLP-1受容体作動薬に対する関心が急激に高まった。

 Lee氏らは「GLP-1受容体作動薬の長期使用が健康に及ぼす影響や累積費用増加に関するデータが存在しないことを考えると、青年/若年成人へのGLP-1受容体作動薬の処方状況を把握しておくことは重要だ」と今回の研究の背景を説明している。
 
 同氏らはIQVIA Longitudinal Prescription Databaseから2020年1月~23年12月のデータを入手した。このデータベースは米国における小売薬局の処方の93.6%のデータを把握している。データは匿名化されており、大学の倫理委員会は調査による分析を承認した。

 対象としたGLP-1受容体作動薬はデュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドの5剤。いずれも成人の2型糖尿病治療薬として承認されているが、青年にも承認されているのは、デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチドの3剤。肥満症治療薬として承認されているのは、リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドで、このうちリラグルチドとセマグルチドが青年の肥満症にも使用可能である。

増加は女性の方が大きい

 2020~23年にGLP-1受容体作動薬を処方された青年/若年成人の数は8,722人から6万567人(+594.4%)と7倍近くに増加。一方、GLP-1受容体作動薬以外の薬を処方された青年/成人の数は1,268万3,040人から1,228万2,525人(-3.1%)と微減した。

 男女別で見ると、GLP-1受容体作動薬を処方された青年男子の数は692人から4,178人(503.8%)、青年女子の数は961人から6,607人(587.5%)に増加。若年成人男性は2,180人から1万2,667人(481.1%)、若年成人女性は4,886人から3万7,111人(659.4%)に増加した。

 2023年にGLP-1受容体作動薬を処方された青年3万947人のうち、1万5,583人(60.0%)は女性で、1万4,147人(45.7%)は南部に在住していた。同年GLP-1受容体作動薬を処方された若年成人は16万2,439人で、そのうち12万4,093人(76.4%)が女性、7万5,284人(46.3%)が南部在住だった。青年群および若年成人群のいずれにおいても、2023年の直近の処方で最も多かったのは、2型糖尿病に対するセマグルチド注射剤だった。

 2023年におけるGLP-1受容体作動薬処方の保険者(Payer)と処方者については、青年群ではメディケイドが48.0%を占め、処方者は内分泌専門医(32.7%)とナース・プラクティショナー(26.4%)が多かった。若年成人群では、保険者は営利保険(commercial insurance)が(66.8%)、処方者はナース・プラクティショナー(33.0%)と家庭医(22.9%)が多かった。

長期安全性や有効性の評価が必要

 以上の結果を踏まえLee氏らは「2020~23年に青年および若年成人に対するGLP-1受容体作動薬の処方は大きく増加した。増加は女性の方が大きいことから、性特異的な安全性リスクについて、患者・処方者双方を教育することが重要だ」と指摘。さらに「適応外使用を含む処方箋上の詳細なデータが得られなったことは研究の限界だが、セマグルチド注射剤の処方は増えているので、肥満症に対する使用も増えていることが示唆される。青年および若年成人におけるGLP-1受容体作動薬の長期安全性ならびに有効性、費用効果の評価が求められる」と付言している。

木本 治