米・Mayo ClinicのTerin T. Sytsma氏らは、コルチコステロイド注射(CSI)が骨折リスクに及ぼす影響を検討するコホート研究を実施。「CSIの累積用量と骨折リスク上昇の関連は認められなかった。骨折リスクを恐れてCSIによる疼痛緩和治療を控えたり、開始を遅らせたりするべきではない」とJAMA Netw Open(2024; 7: e2414316)に報告している。

CSIが骨に及ぼす長期的影響は明らかでなかった

 筋骨格系疾患の疼痛に対しては、関節や滑液包へのCSIが重要な治療戦略の1つだが、注射剤であってもステロイドの全身的な吸収が起こる可能性はあり、有害事象リスクの増大が懸念される。経口ステロイドについては、7.5mg/日超で骨折リスク上昇と関連することが大規模な後ろ向きコホート研究やメタアナリシスで報告されている。一方、CSIが骨の健康や骨折リスクに及ぼす長期的な影響は不明だ。

 Sytsma氏らは今回、ミネソタ州オルムステッド郡の住民のうちMayo Clinic内でプライマリケアを受診し、2018年5月~22年1月にCSIを受けた成人(18歳以上)患者の電子カルテデータを抽出し、検討した。

 CSIの用量はトリアムシノロン当量で計算し、併存疾患についてはチャールソン併存疾患指数(CCI)で評価した。経口プレドニゾロン2.5mg/日以下を30日以上使用、または2.5mg/日超を30日未満使用した患者は試験の対象としたが、2.5mg/日超を30日以上使用した患者は対象から除外した

リスク上昇との関連は骨折歴、年齢、CCIのみ

 対象は合計7,197例(平均年齢64.4±14.6歳、女性4,435例)で、うちアジア系は174例(2.4%)、黒人183例(2.5%)、白人6,667例(92.6%)、その他が102例(1.4%)だった。CCI平均値は1.1±1.9で、追跡期間中の累積CSIの平均用量は、141.8±159.0mg(トリアムシノロン当量)だった。

 CSIの合計投与回数は3万3,684回で、投与部位は大関節(1万5,040回)、椎間関節(6,356回)が多かった。

 追跡期間中、346例(4.8%)に新規骨折が見られ、このうち149例(43.1%)は骨粗鬆症性の骨折。初回CSIから骨折までの平均期間は329日(範囲2~1,422日)だった。

 調整済みCox比例ハザード回帰モデルによる解析の結果、累積CSI用量(トリアムシノロン当量で80mg増加ごと)と骨折リスク上昇に関連は見られなかった〔調整後ハザード比(aHR) 1.04、95%CI 0.96~1.11〕

 全体のうち骨折リスクが低い(Non-high risk)群(4,741例)と骨粗鬆症群(1,845例)についてサブ解析を行ったが、CSI用量と骨折リスク上昇に関連はなかった。

 骨折リスク上昇と関連が認められた因子は、骨折歴(aHR 3.26、95%CI 2.60~4.09)、年齢(同1.45、1.33~1.58)、CCI(同1.07、1.02~1.12)の3つだけであった。

 考察でSytsma氏らは「CSIは痛みを伴う多くの筋骨格系疾患に対する一般的な治療法だが、累積用量の増加に伴う骨折リスク上昇の可能性は懸念事項の1つであり、そのため、CSIの回数制限を考慮する医師もいる。幅広い臨床設定におけるCSI用量/回数を検討した研究はわれわれの知る限り、これが初めてである」と指摘。

 CSIの累積用量が増えても骨折リスクの上昇は見られなかったことから「臨床家は骨折リスクを心配せず安心してCSIを使うことができる」と述べている。

木本 治