エジプト・Ain Shams UniversityのAhmed A. Afify氏らは、Helicobacter pylori(HP)感染が痤瘡(にきび)有病率および重症度と関連している可能性を示唆する症例対照研究の結果をArch Dermatol Res(2024; 316: 621)に報告した。

HP感染は皮膚疾患との関連も指摘されている

 HPは胃以外のさまざまな臓器においても、病原菌としてなんらかの役割を果たしている可能性が指摘されている。これまでに肝胆道系や呼吸器系の疾患、皮膚疾患などへの関与が報告されており、皮膚疾患としては、蕁麻疹乾癬、酒皶などとの関連が報告されている。痤瘡との関連については、2014年に初めて報告されたが(J Med Sci 2014; 14: 92-96)、その後、HP感染と痤瘡に関するデータは少ない。

 Afify氏らは2021年11月~22年10月に痤瘡治療のためにAin Shams University Hospitalの皮膚科外来を訪れた痤瘡患者(症例群)と年齢・性をマッチングさせた健康ボランティア(対照群)を登録し、HP抗原(糞便検査)とHP抗体(血液検査)の陽性率を調べた。さらに、症例群の痤瘡重症度とHP抗原陽性率との関連を検討した。

重症群のHP抗原陽性率は92%

 対象は90例〔症例群45例(平均年齢18.6±4.5歳、女性29例)、対照群45例(同18.7±4.3歳、29例)〕で、糞便中のHP抗原陽性率は対照群の20%(9例)に対し症例群は57.8%(26例)と有意に高かった(P<0.001)。

 同様に、血清中のHP抗体陽性率は、対照群31.1%(14例)、症例群60%(27例)と有意差が認められた(P=0.006)。

 さらに症例群の痤瘡重症度をglobal acne grading system(GAGS)で評価し(1~18点=軽症、19~30点=中等症、31~38点=重症、39点以上=超重症)、重症度別のHP抗原陽性率を検討したところ、軽症群の25%(16例中4例)、中等症群の62.5%(16例中10例)に対し、重症群では92.3%(13例中12例)と、痤瘡重症度とHP抗原陽性率が有意に関連することが確認された(P<0.001)。

活性酸素種、脂漏症、消化器関連抗原が関与か

 Afify氏らは「重症痤瘡患者では糞便中のHP抗原値が軽症/中等症の痤瘡患者および健康対照群と比べ著明に高いことが報告されているが(J Cosmet Dermatol 2020 ; 19: 3291-3295)、今回のわれわれの知見はそれと一致する」と指摘。

 機序については、①HP感染よる活性酸素種(炎症性サイトカインやスーパーオキシド)の増加、②HP感染と脂漏症との関連、③皮膚に存在する他の消化器関連抗原とHPとの相互模倣(cross-mimicry)― などが関係している可能性があると考察している。

(医学ライター・木本 治)