抗IL-5受容体αモノクローナル抗体のベンラリズマブは、血中の好酸球を迅速に除去する作用を有し、気管支喘息の増悪予防に適応がある。一方で、分子病態を区別しない急性増悪治療では効果が示されていないものの、その作用機序に照らせば好酸球増悪に特化した使用は有用な可能性がある。オーストラリア・University of Western AustraliaのSanjay Ramakrishnan氏らは、喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の好酸球性増悪患者を対象に、ベンラリズマブ単回注射と標準治療であるプレドニゾロン全身投与の臨床転帰を比較する第Ⅱ相二重盲検二重ダミー実薬対照ランダム化比較試験を実施。ベンラリズマブの投与により治療失敗率と症状スコアが有意に低下したことをLancet Respir Med(2024年11月27日オンライン版)に報告した(関連記事「重症喘息へのベンラリズマブ、維持期も有効」)。

158例を登録し治療失敗率と症状改善を評価 

 対象は、急性増悪時に好酸球数が300細胞/μL以上の成人患者158例。英国の大病院2施設で2021年5月~24年2月に、 ①プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間内服+ベンラリズマブ100mg単回皮下注射(BENRA+PSL群、52例)、②プラセボを1日1回、5日間内服+ベンラリズマブ100mg単回皮下注射(BENRA群、53例)、③プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間内服+プラセボ単回皮下注射(PSL群、53例)-にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、治療開始後90日時点の治療失敗率と28日時点の症状スコアで、intention-to-treat集団においてベンラリズマブを含む2群の複合(複合BENRA群)とPSL群を比較した。症状スコアは複数の症状コントロール尺度で評価して合計したものをVisual Analogue Scale(VAS)により表した。

治療失敗率はPSL群74%、複合BENRA群は45%、OR 0.26 

 158例全体の平均年齢は57歳(範囲18~84歳)で、女性割合54%、白人95%だった。試験途中での脱落例はなかった。

 90日時点の治療失敗率は、PSL群が74%、BENRA群47%、BENRA+PSL群42%だった。複合BENRA群の治療失敗率は45%で、PSL群と比べ有意に低かった〔オッズ比(OR)0.26 、95%CI 0.13~0.56、P=0.0005〕。

 28日目の症状スコアは複合BENRA群でPSL群と比べ有意に改善し、VASの差は49mm(95%CI 14~84mm、P=0.0065)だった。

全身ステロイドの減量にも期待 

 有害事象による死亡例はなく、ベンラリズマブの忍容性は良好だった。また高血糖と副鼻腔炎/副鼻腔感染症はプレドニゾロン投与にのみ関連していた。

 好酸球エンドタイプの喘息患者の50%、COPD患者の30%が増悪を繰り返すとされており、増悪時には標準治療として全身ステロイド投与が行われている。しかし、全身ステロイド投与は短期使用でもさまざまな害と関連しており、これらを反復使用せざるをえない患者においては、治療失敗率と死亡リスクの上昇が懸念されていた。今回の試験でもPSL群の治療失敗率は74%と非常に高く、Ramakrishnan氏らは「好酸球増悪時のベンラリズマブ使用は、喘息とCOPD治療における全身ステロイド療法を取りやめるという展望にかなうものである」との期待を寄せている。

 同氏らは、これらを踏まえ「ベンラリズマブは喘息およびCOPDの急性好酸球性増悪の治療に使用でき、プレドニゾロン単独による現行の標準治療よりも優れている。今回の結果は、好酸球性エンドタイプの喘息/COPD増悪に対する新治療法を示すもの」と結論している。

(医学ライター・小路浩史)