中国・Second Affiliated Hospital of Chongqing Medical UniversityのJiacheng Huang氏らは、脳主幹動脈閉塞(LVO)による急性虚血性脳卒中(LVO-AIS)を発症後24時間以内の患者540例を対象に、血管内治療(EVT)による90~100%再灌流達成後の血栓溶解薬tenecteplase(TNK)動脈内投与の有効性と安全性を多施設ランダム化比較試験(RCT)POST-TNKで検討。その結果、EVT後のTNK非投与の対照群と比べTNK群では90日無障害生存率〔modified Rankin Scale(mRS)スコア0/1達成率〕は有意に向上しなかった一方、画像診断上の頭蓋内出血が有意に増加したとJAMA(2025年1月13日オンライン版)に発表した(関連記事「血管内治療後ウロキナーゼ動注、頭蓋内出血リスクなし」)。
90日無障害生存率:対照群44.1% vs. TNK群49.1%
POST-TNKでは、中国の34施設で最終未発症確認時刻から24時間以内にEVTを実施しexpanded Thrombolysis In Cerebral Infarction(eTICI)スコア2c~3(90~100%再灌流)を達成した18歳以上のLVO-AIS患者540例(年齢中央値69歳、女性40.9%)を登録。TNK 0.0625mg/kgを動脈内投与するTNK群(269例)と動脈内血栓溶解療法を実施しない対照群(271例)に1:1でランダムに割り付けた。なお、EVT実施前に血栓溶解薬を静脈内投与した患者は除外し、ランダム化は非盲検下で、評価項目の検討は盲検下で実施した。
解析の結果、有効性の主要評価項目とした治療後90日時点の無障害生存率に両群で有意差はなかった〔対照群44.1% vs. TNK群49.1%、調整後リスク比(RR)1.15、95%CI 0.97~1.36、P=0.11〕。
安全性の主要評価項目とした90日死亡率(対照群19.3% vs. TNK群16.0%、調整後ハザード比0.75、95%CI 0.50~1.13、P=0.16)、EVT実施後48時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率(同4.4% vs. 6.3%、調整後RR 1.43、95%CI 0.68~2.99、P=0.35)にも有意差はなかった。
画像診断上の頭蓋内出血は有意に増加
一方、EVT実施後48時間以内の無症候性出血を含む画像診断上での頭蓋内出血の発生率はTNK群で有意に高かった(対照群27.3% vs. TNK群36.6%、調整後RR 1.33、95%CI 1.04~1.69、P=0.02)。
以上の結果から、Huang氏らは「LVO-AIS患者において、EVTによる90~100%再灌流達成後にTNKを動脈内投与しても無障害生存率の有意な改善は認められなかった」と結論している。
LVO-AISに対するEVT後の血栓溶解療法をめぐっては、アルテプラーゼ動脈内投与について検討したCHOICE試験で、プラセボ投与と比べ症候性頭蓋内出血のリスクは上昇せず90日無障害生存率が向上することが示されていた(JAMA 2022; 327: 826-835)。ただし、同試験はプラセボの供給不足から早期中止となっており、①サンプルサイズが小さい、②約60%がランダム化前に血栓溶解薬を静脈内投与、③eTICIスコア2b(50~89%再灌流)の患者も含む-などの点が今回のPOST-TNKとは異なっている。
また、今回の試験と同様の手法で血栓溶解薬ウロキナーゼ動脈内投与の有効性と安全性を検討したRCTであるPOST-UKでは、EVT実施後48時間以内の画像診断上での頭蓋内出血の発生率についてウロキナーゼ群と対照群で有意差はなかった(JAMA 2025年1月13日オンライン版)。
(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)