足の悩み、一挙解決
第17回 失敗しない靴選びのコツ
〜合っているかをどうやって見分ける?〜 足のクリニック表参道院長 桑原靖
試着するときは、つま先ではなく、かかとをトントンと地面に当てた上で、ひもやベルトをしっかり締め、甲と固定します。そして、歩いてみて、踏み返すときに、かかとが動かないでフィットしているかどうかをチェックします。
かかとと甲の2カ所で固定されていれば、踏み返す瞬間の不安定な足を、靴自体がサポートするため、足の疲れや痛みが軽減されます。
かかとの深さは、浅すぎず、深すぎず。上端がアキレス腱(けん)に当たらないくらいが最適です。
ひもやベルトが緩いと、靴の中で足だけが踏み返す動作をするため、せっかくいい靴を履いていても意味のないものになってしまいます(図2参照)。
図2
各靴メーカーの木型は、かかとの大きさがある程度、決まっているので、かかとが合わなければ、他のメーカーから選ぶというのも選択肢の一つです。
写真1(株式会社セストセンソ提供)
◇ひも・ベルトで固定
いくらかかとが合っていても、甲の覆われている部分が浅く、歩くと脱げてしまいそうな靴を履くと、脱げまいと、無意識のうちに指に力が入ってしまい、足に負担がかかって疲れてしまいます。
靴は甲の部分まで覆われていて、ひもかベルトで固定できるものが理想です。
甲が覆われていないパンプスを履くときは、市販されている透明のバンド等を活用して甲と靴を固定するといいでしょう(写真1)。
学生靴の定番とされているローファーという言葉には、「ぐうたら」という意味があるくらいで、いい加減な靴といっても過言ではありません。
簡単に脱いだり履いたりできるスリッポン(ひもや留め具のない靴=写真2)も、本来は室内履きです。
写真2
日常診療においては中学、高校、社会人の1年生で足トラブルのピークがあるように感じられ、恐らくは指定靴や慣れない靴が原因であろうと思われます。
足のトラブルが多い人は、靴だけで足に合わせることは難しいので、インソールを組み合わせることで、足に合った靴が完成すると考えてください。
自分の足に合ったインソールと交換するために、インソールが外せる構造の靴を選ぶのもポイントです。パンプスでも、インソールが外れるものが市販されていますので、よく見てみましょう。
これが可能となれば、かかと、甲、足の裏、全ての方向から足を固定することができ、靴が歩行のための補助道具として機能してくれます。
◇ペタンコ靴は疲れやすい
歩くときに踏み返しの動作がスムーズにできるよう、アウトソール(靴底)は指の付け根部分だけで曲がる構造のものか、チェックしましょう。
厚底で「ぽっくりげた」のような構造の靴は、指の付け根が全く曲がらないため、踏み返し動作が正しくできず、一見、楽そうに見えても、実際に履いて歩くと、とても疲れます。
逆にアウトソールが薄くて、完全にフラットなペタンコ靴は、歩くときに足が不安定になる「踏み返しの時間」が多くなってしまうため、疲れやすい上、地面からの衝撃がダイレクトに足へと伝わってしまいます。
また、靴はドロップ(かかとと指の高低差)が5~10ミリ程度あるものが理想で、アウトソールは、ある程度の硬度とクッション性を兼ね備えた発泡素材が良いでしょう。
つま先部分が少しだけ浮くように作られていれば、さらに歩きやすくなります。
ダイエット効果をうたって、アウトソールがわざと不安定な構造になった靴もありますが、効果がないばかりか、足の機能と構造を考えると、あまりお勧めできません。
速く走れることをうたった子ども用の運動靴に、わざとアウトソールのデザインが左右非対称になったものがあります。
トラックを走るときだけに履くならパフォーマンスがいいかもしれませんが、1日中履くのはNG。日常診療においては、非常に気になる靴です。
(2019/04/15 06:00)