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「外反母趾」の予防と治療=大切な靴選び

  ◇ハイヒールやめても進行
 「ハイヒールを履かなければ治る」と安易に考えるのも禁物だ。中等度以上に進行した外反母趾は、歩くだけでも進行するという。

 「指が真っすぐ伸びていれば、前から押されてもなかなか曲がりません。しかし、少しでも曲がり始めると変形しやすくなります。たとえハイヒールをやめても、歩く時にかかる力だけで悪化していきます」(井口医師)

 歩きながら足が床を蹴る瞬間、すべての体重は片方の親指の付け根に集中する。1日1万歩歩くとすれば、片足当たり5000歩ごとに体重がかかることになる。親指が曲がり始めた状態でこれだけの負荷がかかると、たとえ毎日裸足で過ごしたとしても、ただ歩くだけで症状は悪化していく。特に高齢者の場合は、骨がもろいために重症化しやすい。そのまま放置すると、足の負担を減らすために反対側の膝や腰に重心がかかり、姿勢も悪くなる。肩こりや頭痛、膝の関節症、腰痛、腰椎ヘルニアなどさまざまな二次的障害を併発し、寝たきりの状態になることもあるという。

  ◇日帰りOKの手術も

 重度の外反母趾には、足の親指の骨を切って付け直す「第一中足骨骨切り術」が行われる。全身麻酔下で手術を行い、1週間ほど入院するのが一般的だ。一部の病院では、日帰りが可能な「デルモ手術(DLMO、distal lineal metatarsal osteotomy)」を実施している。

 デルモ手術は局所麻酔下で行われ、傷跡は2センチ以下。患者の負担が少ない方法として注目されている。通常の骨切り術では金属プレートやスクリューを何本も使って骨を固定するが、デルモ手術で用いるのは鋼線1本だけ。手術後は包帯を巻くだけで、その日のうちに歩いて帰れるが、術後に必要な注意は厳重に守らなければならない。どの手術でも術後に、かかとが高く先のとがったパンプスを履いたりすれば再発する。

 足について気になることがあれば、足の外科的治療を専門的に行っている医師に相談するとよいだろう。日本足の外科学会で専門医リストを公開している。


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