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甘く見ると危険な静脈瘤
出産や立ち仕事で血管に瘤

 妊娠や出産、立ち仕事や座りっ放しといった生活の継続などが原因で、ふくらはぎなどの足の血管が膨れて瘤(こぶ)のようになるのが下肢静脈瘤(りゅう)だ。40歳を超える頃から発症が増えるが、深刻な健康被害はないとされている。ただ、見た目が気になる上、放置しているとかゆみや炎症を生じてしまったり、皮膚が破れて潰瘍へと悪化してしまったりすることもある。
 下肢静脈瘤の患者は全国で中高年を中心に1000万人程度。医療機関を受診しているのは150万人前後と推定されている。また、治療を受けた人の中にも手術で静脈瘤を除いた後に必要なケアをせずに再発させてしまった患者も少なくない。

下肢静脈瘤ができる仕組み(メディバンクス「足のことでお悩みのあなたへ」より)

 ◇悪化すると周囲組織破壊

 「血液は心臓で圧力を掛けられて四肢と末端まで動脈で送られ、そこから重力に逆らって静脈を回って心臓に戻ってくる。静脈には逆流防止の弁がある上に、ふくらはぎの筋肉で静脈を圧迫して血液を押し戻すなどの機能も備えている」

 静脈瘤が悪化すると、血管だけでなく周囲の組織も破壊されてしまう「静脈うっ滞性潰瘍」の恐れがある。この治療に詳しい順天堂病院の田中里佳先任准教授(形成外科)は、足の血流の仕組みをこう話す。

 その上で「加齢や、直立時間や座ったままの時間が長くなるといった条件が重なれば、心臓に戻るべき血液が下肢にたまってしまい、血流が滞って静脈瘤ができる。血流の滞りが悪化した血管から血液成分が漏れ出てしまい、下肢がむくみ、湿疹や潰瘍を作ることもある」と、静脈瘤ができるメカニズムを解説する。

 ◇手術後も再発の恐れ

 健康面での影響はほとんどないといわれる静脈瘤だが、「目立つ」とか「かゆくて仕方がない」といった理由で手術を受けて切除する人も少なくない。このような患者についても田中先任准教授は「できた瘤を除去しても、圧迫療法をやめてしまったり、生活習慣や加齢などの条件に変化がなかったりすれば、すぐに再発してしまう。一度できてしまうと、根気よく圧迫療法などの治療を続けていく必要があることを忘れないでほしい」と言う。

田中里佳・順天堂病院形成外科先任准教授

 静脈瘤の中には、血流の「うっ滞」が悪化して血液中の成分が周囲の体組織を破壊してしまい、床ずれのような潰瘍が大きくなったり、体組織に大きな穴が開くような傷ができてしまったりすることもある。

 田中先任准教授は「ここまで症状が進めば、形成外科や皮膚科、血管外科などが協力した、十分で専門的な治療が必要になる」と話す。このため、同病院では総合的に対応するために複数の診療科の専門医やフットケアの指導に携わってきた認定看護師、臨床検査技師を集めた「足の疾患センター」を今年4月に設立している。

 ◇ストッキングは医師の指導で

 重篤化しないように、症状を管理することも重要になる。むくみやだるさなどの症状の軽減や潰瘍につながる皮膚炎の重症化予防には、ふくらはぎや太ももの筋肉を使うウオーキングやスクワットのような運動の励行と、太ももやふくらはぎを締め付けることで血流を促進して血液の滞留を防ぐ弾性ストッキングの着用や弾性テープを巻くことが一般的だ。

 「ただ、過剰に締め付けて血行を阻害してしまうと逆効果になる。どの部分をどの程度の強さで締め付けるか、医師の診察を受けた上で、適切な圧迫と範囲の指導を受けるのが安全だ」。田中先任准教授はこうアドバイスする。

下肢静脈瘤が悪化した場合、潰瘍になることも

 ◇3種類の圧迫圧

 このような要望に応じるために3種類の圧迫圧を選べる医療用弾性ストッキングを製造・販売している医療機器メーカー「アルケア」の担当者は「病状に応じて必要な圧迫圧は変わるので、医師の指導に従って選んでほしい」と話す。ストッキングは静脈瘤のできた場所に応じて、(1)ふくらはぎならハイソックス型(2)膝の裏や太ももならストッキング型ーという選択が必要になる。

 締め付ける力が強くなればなるほど、着用するのが難しくなり、上手に履けない人が増えることも問題だ。このため同社は着用した際にストッキングにしわが生じたり、ずり下がったりしていないかなど、「着用チェックポイント」や履き方、下肢静脈瘤自体を紹介するリーフレットなどを作成、医療機関を通して配布、啓発に努めている。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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