薬が効かない高血圧で疑う―褐色細胞腫・パラガングリオーマ
血圧上昇ホルモンが関与
主な症状が高血圧という腫瘍がある。「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」だ。医仁会武田総合病院(京都市)の成瀬光栄内分泌センター長は「降圧薬を飲んでいても血圧が十分に下がらないようであれば、一度、内分泌内科を受診して検査を受けてください」と呼び掛ける。
降圧薬の効きが不十分だと感じたら、内分泌内科の受診を検討
▽主症状は高血圧
副腎の中心側にある髄質に発生する褐色細胞腫と、全身の動脈のそばにある神経節に発生するパラガングリオーマという腫瘍は、発生する場所は異なるが、成瀬内分泌センター長は「カテコールアミンというホルモンを過剰に産生するという共通点のある、同じ分類の疾患です」と説明する。
カテコールアミンは、主に血圧を上昇させる働きを持つノルアドレナリン、アドレナリンなどのホルモンの総称で、過剰に作られると血圧が高くなる。他の症状としては、頭痛、動悸(どうき)、発汗過多、体重減少、便秘、顔面の蒼白(そうはく)なども表れる。
▽術後は長期経過観察を
診断には、腫瘍から分泌されるカテコールアミンや、それが分解されてできるメタネフリンの量を測定する。尿中のカテコールアミンおよびメタネフリンの測定には24時間の蓄尿が必要なため、検査入院が一般的だった。それに対し、血液中のメタネフリンの測定検査は外来で受けられるほど簡便な上、従来法より正確に診断できるという。2019年から保険が適用されるようにもなった。外来での血液検査で褐色細胞腫・パラガングリオーマの疑いがあれば、さらに検査を進めることになる。
褐色細胞腫・パラガングリオーマの治療は、カテコールアミンの作用を阻害する降圧薬
α遮断薬)でホルモンの過剰による高血圧を抑制しながら、可能な限り早期の腫瘍摘出手術を検討する必要がある。通常、摘出後は治癒することが多い。しかし、組織検査で悪性腫瘍ではなかったのに、その後、肝臓や骨、リンパ節などに転移・再発するケースがあることから、術後は定期的な経過観察が重要になる。「最低でも1年に1回、10年間は定期的に検査を受ける必要があります」と成瀬内分泌センター長は話している。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/04/25 09:00)