足の悩み、一挙解決

リウマチ足の最新手術(足のクリニック表参道 矢野紘一郎医師) 【PART2】第7回

 リウマチによる関節破壊の手術といえば、以前は膝関節や股関節といった比較的大きな関節に対する手術が主流でしたが、近年では薬物療法の進歩によって、進行を著しく抑えられるようになってきました。その結果、これまではあまり気にならなかった足の変形を治し、より生活の質を高めたいという目的で足の手術を受ける人が多くなってきました。手術法も10年前と比べると格段に進歩しています。そこで、代表的な足指と足首、二つの手術方法をご紹介します。

関節温存手術前後のレントゲン写真(「足のクリニック表参道」提供)

 ◇関節温存手術で足指を動かす

 リウマチで足の指が変形すると、普通の靴が履けない、指が重なりあって治りにくいタコや傷になるなど、さまざまな不都合が生じます。リウマチの足の手術に関しては、日本が最先端の技術を持っており、世界をリードしています。

 海外では、破壊された関節を切除することで変形を治す「関節非温存手術」が主流です。ただし、この手術法の場合、関節の機能がなくなるため、歩くときに足の指で地面を踏み返すことができず、スムーズに進むことができません。

 これに対して、日本では関節の機能を残す「関節温存手術」を10年ほど前から積極的に行っています。薬物療法が劇的に進歩している中、腱(けん)や軟部組織を工夫して関節をできるだけ残す手術をすることで、より高い機能が維持できるようになります。

【足のクリニック】リウマチ足に対する関節温存手術

針金で足指を一時的に固定した状態のレントゲン写真(「足のクリニック表参道」提供)

 ◇針金で骨を固定

 手術は全身麻酔か腰椎麻酔で行い、変形した骨を一部のみ切り、正しい形に整えます。

 骨を切った後は1.2ミリ程度の細い針金を指先から刺して一時的に固定します。針金が指先から出ている状態で2週間、入院中は専用のサンダルを履いてかかとで歩きます。

 見るからに痛そうに感じるかもしれませんが、針金を刺すときは手術中で麻酔がかかっている状態で行います。痛みを感じる神経は骨の周囲の骨膜の中にあります。針金は指先から刺さって骨の中を貫いているだけで、神経には触れていないため、多少違和感がある程度で痛みは感じません。

 2週間後、病棟でペンチを使って針金の先端をつまんで抜きとりますが、麻酔は不要で、刺さっていた部分の傷は何もしなくても数日でふさがります。

かかと歩行用のサンダル(「足のクリニック表参道」提供)

 ◇人工関節で足首の機能を回復

 足首の関節にリウマチの障害が出ると、初期では足首が腫れてきたり、歩くと足首が痛い、しゃがみづらいなどの症状が表れたりします。進行して関節が破壊されてくると、足が傾いてしっかりと床を踏めなくなり、スムーズに歩くことが難しくなります。関節が完全に破壊され、足の側面を床に付けて歩くようになると、移動時の転倒など大きなリスクを伴うようになってしまいます。

 足首の手術をする場合、手術方法は足関節固定術か人工足関節置換術のどちらかになります。関節破壊の進んだ骨同士が動いてこすれることで痛みが生じるため、骨を固定して関節を動かない状態にするのが足関節固定術、悪くなった部分を人工関節に置き換えるのが人工足関節置換術です。どちらの方法で対応するかは、変形の度合いや骨格のバランスなどを総合的に考えて判断します。

 足関節固定術は関節を固定することで動きがなくなりますから、こすれるような痛みはなくなります。痛みから開放され変形も治るため、患者さんからは非常に喜ばれる手術です。しかし、足首が90度で固定されてしまうため、階段を降りるときにつま先から降りられない、ブーツが履きづらいなどの不都合が生じます。本来動くべきところが動かなくなるため、その動きは周りの関節が担うことになります。その結果、周りの関節に大きな負担がかかってしまい、その関節の破壊が悪化していく場合もあります。

 これに対して人工足関節は、足首の動きを残すことができるので、より自然な形での機能回復が可能です。ただ、膝や股関節の人工関節置換術と比べて症例数が極端に少ないため、この手術を行える病院や医師の数もかなり限られます。

 一度破壊された軟骨や骨は自然に治ることはないので、手術の際は足首の距骨(きょこつ=足首にある骨)と脛骨(けいこつ=すねの骨)の間の悪いところを切り取ってチタンなどの金属でできた人工関節に入れ替えます。こうすると関節の動きが残せるため、術後は健康な人と同様スムーズに動けるようになります。他の関節への負担も減らせるので、関節破壊が付きまとうリウマチ患者さんの手術法としては、最も適していると言えます。

 東京女子医大で人工足関節置換手術を行う場合、入院期間は4週間です。ただし、足首は小さな面積で全体重を支えているため、他の関節よりも強い負荷がかかる上、階段を踏み外したり、ひねってしまったりといった外傷が多く、手術後のケアやリハビリも重要となってきます。

 リウマチ患者さんの足病変を専門的に診る医師は全国的にも限られています。もし、日常的に足の痛みや変形で不便を感じているなら、積極的に主治医に相談してみることをお勧めします。

 ◇リウマチ足のフットケア

 手術で足の変形を完全に近い状態に治せた場合はよいのですが、その後の経過によっては別の関節が変形していくこともあります。また、手術を受ける決心がつかずに変形したままの足で日常生活を送っている人もいます。

 足の変形があると荷重バランスの不均衡によりタコができて痛みますが、そのまま放置するとタコが皮膚を突き破って小さな潰瘍(関節に続く深い穴)ができる場合があります。リウマチの患者さんは普段から薬物療法で免疫力を抑制しているため、この潰瘍から細菌感染が起きたら一大事です。状態によってはリウマチ治療薬で寛解状態を維持できているにもかかわらず、一時的にそれを中止せざるを得なくなることもあります。リウマチの患者さんにとっては、足のちょっとしたケガでも大きなダメージにつながるのです。

 リウマチ足に対する医療的な介入の基本は病気そのものの早期治療と、二次的に起こる合併症の予防で、適切な靴選びやインソールの活用、定期的にフットケアを行うなどの、足への対策が重要です。フットケア外来、とくに「リウマチ足ケア外来」では、足にできたタコを削ったり、爪を切ったりすることはもちろん、手の変形により足の指の間を洗うことが困難なこともありますから、足を清潔に保つための指導なども行います。また、フットケアは月2回の保険診療が認められています。(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)

矢野紘一郎医師


 矢野 紘一郎(やの こういちろう)氏

 2004年富山医科薬科大学卒業、足のクリニック医師(木曜日午前、土曜隔週午前・午後)、東京女子医科大学整形外科講師、リウマチ学会指導医・専門医、整形外科学会指導医・専門医。著書に『リウマチ足の診かた、考え方』中外医学社などがある。

   【足のクリニック表参道 桑原靖院長プロフィル】  





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