治療・予防

下肢静脈瘤を接着材でふさぐ―グルー治療
手術時間短縮、体への負担が軽減(横浜旭中央総合病院血管外科 白杉望部長)

 40歳以上の日本人の8.6%で認められ、患者数が1000万人以上と推計される「下肢静脈瘤(りゅう)」。足の表面近くの血管がこぶのように浮き出る病気だが、2019年12月には侵襲性が少ない新たな治療法として「グルー治療」が保険適用となった。横浜旭中央総合病院血管外科(横浜市旭区)の白杉望部長にその特徴や適用例などについて聞いた。

グルー治療の特徴

 ▽経産婦に多い疾患

 足の静脈には血液が心臓に戻る際に逆流を防ぐ弁が付いているが、下肢静脈瘤は、皮下の静脈の弁が壊れて血液がたまり、こぶ状に膨らむ病気だ。出産経験のある女性の2人に1人が発症するという報告もある。

 「皮膚表面の小さなこぶは外来で治療が可能ですが、太ももやふくらはぎの太い静脈にある場合は手術が必要になります」と白杉部長。

 手術のほとんどは、カテーテルを用いてレーザーや高周波(ラジオ波)の熱で血管内腔を焼き、静脈をふさぐ血管内焼灼(しょうしゃく)術である。手術時間は1時間ほどで日帰り手術も可能だ。ただ、熱による痛みや副作用を抑えるため10カ所前後の部位への局所麻酔が必要で、術後早期の痛みを防ぐために弾性ストッキングの着用が必須となる。頻度は少ないが、血栓症や神経障害などのリスクもある。

 ▽医療用接着材を注入

 新たな選択肢として加わったグルー(接着材)治療は、血管内にカテーテルを用いて微量の医療用接着材を注入して血管をふさぐ血管内塞栓術だ。熱を発せず、局所麻酔を行うのは1カ所のみで、組織や神経の損傷も少ない。手術は30分程度で済み、術後に弾性ストッキングの着用も不要だ。

 グルー治療について白杉部長は「皮膚の変色や潰瘍などのない、直径12ミリ以下の下肢静脈瘤に限られます。血管内焼灼術に比べて、やけどや痛みなど体への負担が少ない点がメリットです」と説明する。

 しかし、接着材に対するアレルギー反応が表れる人には適用できないなど制限はある。「治療後に接着材が血管内に残存し続けることを理由に血管内焼灼術を選択する患者もいます」と白杉部長。また、国内での治療実績が十分ではないため、長期的な体への影響を考えると、「現時点では自身で弾性ストッキングをはくことが難しい高齢者などに向いている治療と言えるでしょう」と話す。

 グルー治療を受けられる医療機関は増えているが、治療後は慎重な経過観察が求められる。下肢静脈瘤の状態、年齢、術後のケアなどを踏まえ医師と相談し、治療法を選択することが重要だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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