足の悩み、一挙解決
「歩き方の問題」の実例と解消法(足のクリニック表参道 理学療法士・久保和也さん) 【PART2】第16回
足のトラブルで悩む患者さんの多くから、「自分の歩き方が悪いからではないか」という声が聞かれます。歩き方は結果であって、原因ではないということを前回、解説しました。そこで、今回は実際にクリニックの歩行機能改善外来で対応した2人の患者さんのケースをご紹介します。
【画像1】爪先を外側に回し、足首が十分に曲がらないことを代償する動作(足のクリニック表参道提供)
◇足首の柔軟性を高める
【ケース1】
・50代女性
・膝の痛み、親指の側面と第2指の付け根にタコができて痛いことを訴える。
・膝の痛みに対し外用薬を処方、タコに対してはフットケア外来で処置を継続して行っていたが、いずれも痛みが残存していたため、歩行機能改善外来を受診。
この患者さんに対しては、歩行機能改善外来の初回診療時に、歩行分析、関節可動域測定、筋力検査を中心に実施し、症状の原因が足首の硬さである可能性を把握しました。そこで、患者さんの症状に合った正しいストレッチ方法を指導し、自宅で実践していただきました。その後、月1回の頻度で関節の硬さや歩行の状況をチェックし、約2カ月で膝とタコの痛みの症状が緩和しました。
【画像2】正しいアキレスけんストレッチの方法(足のクリニック表参道提供)
足首が硬い人は、体の重心が前に動いた時に、足首がそれ以上曲がらずに止まってしまいます。よくあるパターンが足首を倒せない代わりに、爪先を外に逃がして、ちょっとネジって逃がすという動かし方です。(画像1)
足首の硬さが原因で正常に地面を十分に蹴ることができなくなっている典型例です。
爪先が外に向くと親指の内側の方に体重がかかってしまって、親指の側面にタコができます。足の骨格も内側に崩れ、膝が外を向くので、膝を痛める原因にもなります。見た目上は普通に歩けているように見えても、膝の関節や足が本来とは違った動きになるので、トラブルの原因になります。
◇アキレスけんをストレッチ
足首の柔軟性を高めるためには、アキレスけんのストレッチが有効です。ふくらはぎの筋肉が硬いと、足首ががちっと固まってしまい、正常な歩き方ができなくなってしまいます。ストレッチで足首の可動範囲を広げると、まっすぐ蹴り返しができるようになります。(画像2)
【画像3】段差を使ったアキレスけんストレッチ。階段を利用する場合は、手すりのある場所で(足のクリニック表参道提供)
アキレスけん伸ばしは、前後に足を開き、前の膝を曲げた状態で後ろに引いた足を1~2分、じーっと伸ばす。回数は2、3セット。家ですぐできる簡単な方法です。
日ごろから運動習慣があって自信がある人は、さらに強度を上げたストレッチを。階段などの段差に爪先だけを乗せて、ぐっと下までかかとを落とす。その状態で20~30秒キープして、また戻して下げる。後ろに転んだら危ないので、必ず何かにつかまった状態で行ってください。(画像3)
◇親指の筋力を鍛える
【ケース2】
・40代女性
・小指側にタコができて痛い、歩き方が悪いのか気になると訴える。
・タコに対しては履物による圧迫の影響もあり靴の選び方を含めた生活指導を実施、またフットケア外来でタコの処置を継続で行っていたが、タコが繰り返し小指にできるため歩行機能改善外来を受診した。
【画像4】足の小指で地面を蹴り返す歩き方。足の外側に偏った形で体重が乗っているのが分かる。(足のクリニック表参道提供)
この患者さんの歩行分析をしたところ、歩く際、小指で地面を蹴り返す癖があることが分かりました。さらに、足首周囲の筋力検査を実施したところ、親指で地面を蹴るための筋力が不足していることも明らかになりました。(画像4)
歩き方が小指のタコに悪影響を与えていることが明白だったため、正しい親指の筋力トレーニングを指導し、実践してもらいました。約3カ月のトレーニング実践でタコの痛みが軽減し、蹴り出す歩き方もできるようになりました。
何度削っても小指側にタコができるという場合、親指を使わずに小指側に体重かけて地面を蹴っている可能性があります。足は本来、親指側と小指の付け根、かかとの3点で体重を支えるのが正常と言われていますが、親指の筋力が不足していて支えられないと、体重をかかとと小指寄り、人によっては小指側だけで支えるようになってしまいます。すると、小指側の負担が過剰になってタコができてしまいます。
【画像5】爪先立ちのトレーニング。最初のうちは壁や椅子の背などに両手でつかまって行った方がいい。親指に体重をかけるように意識し、真上に伸びていくようなイメージで(足のクリニック表参道提供)
◇爪先立ちでチェック
親指が使えているかどうかのチェックは、両足もしくは片足で爪先立ちをしてもらうと、すぐに分かります。小指側に体重がかかってしまう人、親指に重心をかけようとするとぐらつく人は、普段、親指を使っていない証拠です。
爪先立ちは、膝は真っすぐ伸ばしたままの状態で、体は前傾させずに天井に向かって上がっていくようなイメージです。(画像5)親指を使えるようになると、しっかり親指で地面を蹴ることができるようになるので、足の負担が減り、効率的に歩けるようになります。(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)
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久保 和也(くぼ かずや)
2009年国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科卒業、春日部中央総合病院フットケアチームに所属。足病患者のリハビリテーションを7年間経験後、15年に足のクリニック表参道の事務長就任。機能改善外来を設立し、スポーツ障害含む足部疾患全般のリハビリテーションを担当。日本フットケア足病医学会認定士。日本フットケア足病医学会、日本足の外科学会に所属。
全国から患者が殺到するクリニック
「足のクリニック表参道」院長。2004年埼玉医科大学医学部卒業。同大学病院形成外科で外来医長、フットケアの担当医として勤務。13年東京・表参道に日本では数少ない足専門クリニックを開業。専門医、専門メディカルスタッフによるチームで、足の総合的な治療とケアを行う。
日本下肢救済・足病学会評議員。著書に「元気足の作り方 ― 美と健康のためのセルフケア」(NHK出版)、「外反母趾もラクになる!『足アーチ』のつくり方」(セブン&アイ出版)など。
(2021/04/28 05:00)
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