治療・予防

大学生のメンタル不調
1人で悩まないで相談(早稲田大学保健センター 石井映美教授)

 気分がふさぎがちで大学に行くのがおっくう、頭がぼーっとして学業に身が入らない―。こんな症状は心の病が原因かもしれない。早稲田大学保健センター(東京都新宿区)の石井映美教授(精神科医)は「20歳前後は心の病を抱えやすい年代です。1人で悩まず、誰かに相談してほしい」と訴える。

 ▽多くは適応障害

 同センター「こころの診療室」には、同大学の学生が半日に10~15人ほど受診する。最も多いのは就職活動を控えた4年生で、次は大学生活に慣れていない1年生だ。同級生に劣等感を持ったり、サークル活動に適応できなかったりして心身の不調を訴えてくる。「多くは適応障害です」と石井教授。

 日本学校保健会によると、心の不調を抱える成人の4分の3ほどが20代半ばまでに発症しているという。「多くの調査で、留年や休学はメンタルヘルスの問題と大いに関連していることが分かっています。自殺が若年層の死因の第1位という日本の現状を踏まえると、大学生のメンタルヘルスを支えることは重要です」

 コロナ禍で好転例も

 加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大も大学生のメンタルに大きな影響を及ぼしている。2020年5~6月に秋田大が学生に新型コロナの影響に関するアンケートを実施したところ、回答者の1割以上に中等度のうつ症状が見られたという。

 早稲田大では、20年9月に行った健康診断で不調が疑われた学生に面談を行ったところ、1年生からは、せっかく入学しても通学できない状況に「やりきれない」といった声が漏れた。

 また、家族と長時間過ごすストレスが募り、泣きながらいら立ちを訴える学生もいた。その一方で、対人関係が苦手でキャンパスでつらい思いをしていた学生の中には、リモート授業になってストレスから解放され、のびのびと過ごしている人もいるという。

 適応障害はストレスが軽減すると、大抵は症状も回復するが、うつ病や統合失調症などは薬物治療が必要になる。「心の不調を感じたら、努めて専門外の情報に触れて視野を広げ、自分を見つめ直すことが大切です。学業に支障が生じるようなら精神科の受診を検討してみてください」と石井教授は勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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