治療・予防

「変異株は別のウイルス」
~子どものリスク高まる可能性~

 新型コロナウイルスの感染拡大が危機的な状況を迎えている。従来のウイルス遺伝子が変異した「変異株」が大きな原因だ。5月上旬の日本感染症学会学術講演会・日本化学療法学会総会では、変異株に関する緊急シンポジウムが開催された。専門家は「従来の株とは別のウイルスと考えた方がよい」とした上で、子どもへの感染リスクが高まる可能性を示唆した。

英国型変異株のウイルス(国立感染症研究所提供)

 ◇インド株、封じ込めるか

 感染力が強く、重症度が増すとされる変異株を「警戒すべき変異株(VOC)」といい、英国株は130カ国以上、南アフリカ株では90カ国以上がVOCに指定している。インドで猛威を振るう変異株は、4月下旬に日本国内で初めて検出され、その後、東京都でも確認された。このインド株は英国株に続く脅威となる恐れもある。国立感染症研究所(感染研)の齋藤智也・感染症危機管理研究センター長は「インド株を封じ込められるのか。チャンスはごく初期に限られる。ワクチンの有効性が低下した場合にどう対応するか、諸外国の関心も高い」と語った。

 ◇感染力は1.3倍

 1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す指標が「実効再生産数」だ。感染研の鈴木基・感染症疫学センター長は「4月5日時点の初期評価(暫定的評価)」と断った上で、「英国株の実効再生産数は従来株に比べ、単純平均で1・32倍高い」と指摘した。

 変異ウイルスの流行は2021年2月以降に急激に拡大した。その大半が英国株だ。英国やフランス、ドイツでは、いったん従来株が100%英国株に置き換わった。鈴木センター長は、国内における英国株への置き換わりについて「先行した大阪府で80~85%。各地で置き換わりが進行している」と語った。「英国株は、伝播(でんぱ)性、感染の速度が従来株より50%程度高い」と言う。

緊急事態宣言に伴い臨時休業する商業施設=東京都千代田区

 ◇より強力な対策を

 問題は、子どもへの感染だ。感染リスクは、従来株では20代にピークがあり、高齢者になると再び高まる。15歳未満では低かった。鈴木センター長は英国株について「20代のピークは同じだが、それ以外の各世代はほぼ同等のリスクがある」と述べるとともに、「子どもへの感染のリスクが高まっている可能性がある」と注意喚起した。

 「従来株に対しては緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により制御できていたはずだ。しかし、変異株は全く別のウイルスだ。1月ごろと同様の対策だけでは、新規感染者の発生を十分に制御できない」として、危機感を持ってより強力な対策を取るように主張した。

新型コロナウイルスのワクチン(AFP=時事)

 ◇試薬で変異株を判別

 新型コロナウイルスの変異株は、ヒトの受容体と結び付くスパイクタンパク質が変異している。琉球大学大学院医学研究科の金城武士・助教は「スパイクタンパク質の有無を調べれば、どの変異株であるかの判別が可能だ」と述べた。検査には多項目の遺伝子を同時に調べることができる試薬を用いる。金城助教は琉球大学における使用実績から「韓国の臨床検査薬大手シージーン社のものが汎用性が高く、優れている」と話した。この試薬は従来株と三つの変異株に対応し、2時間程度で結果が判明する。

 一方、ファイザー(米国)、モデルナ(同)、アストラゼネカ(英国)のワクチンについて金城助教は「どのワクチンでも接種後の効果は保たれる」と報告した。

 ◇抗体の働きに影響

 ウイルスを取り囲んで細胞に感染できなくする抗体の働きが「中和作用」だ。感染研の高橋宣聖・治療薬・ワクチン開発研究センター長は「中和活性(中和作用の活性度)の高い抗体は変異の影響を受けやすい」と話した。その結果として、変異ウイルスには感染しやすくなる。国内で新型コロナウイルス感染症から回復した患者188人を調べたところ、「英国株に対する中和活性の低下はほとんど見られなかった。しかし、ブラジル株では低下し、南アフリカ株に対しては著しく低下した」という。(了)

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