緊急事態宣言、解除は慎重に判断を
~若年層へのワクチン接種拡大も~
新型コロナウイルスの感染は厳しい状況が続く。大都市圏が中心であった感染の流行は、大阪や東京が減少傾向に転じる一方で、北海道などの地方が深刻な状態に陥っている。感染症に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉・主任教授は「おそらくゴールデンウイーク期間中の人の移動がきっかけとなり、多くの人が集まった地域を中心に時間差で感染者数の増加が起こっている」と指摘。「『第4波』は感染力の強い変異株ウイルスの影響もあるため、感染を抑えるのはさらに難しくなっており、緊急事態宣言の解除は慎重に行う必要がある」と訴える。
緊急事態宣言発令中の広島市中心部を行き交う人たち=広島市中区
◇追加対策が必要
松本教授は「ゴールデンウイーク期間中は大規模商業施設などの休業要請も、人の行き場を無くすことである程度の効果はあったかもしれない」と分析する。一方で「連休が明ければ仕事や通学で大きな人流が生じるため、同じ対策を継続しても効果はあまり期待できない。感染者数を減らすためには状況に合わせた対策の変更が必要だ」と言う。
緊急事態宣言の解除時期については「もし感染者数が減ったとしても、逼迫(ひっぱく)した医療体制を回復させるには相当の時間がかかる。6月の後半まで緊急事態宣言を延長するのは当然だ。さらに在宅勤務の比率を引き上げるなどの追加策を講じて、感染を継続的に抑制できる体制を整えておく必要がある」と言う。
◇誤ったメッセージ
「『第3波』の後、短期間でリバウンドが起こってしまったことを教訓として捉えるべきだ。安全・安心な東京オリンピック・パラリンピックを目指すのであれば、今後、長期間、感染を抑えておかなければならない」
松本教授はその上で「緊急事態宣言の解除は『もう大丈夫』という誤ったメッセージを発してしまうことになるため、宣言の解除は極めて慎重に判断すべきだ」と話し、6月下旬以降の延長も視野に入れるよう求めた。
大規模接種会場での新型コロナウイルスワクチンの接種(EPA=時事)
◇16歳未満も接種対象に
対策の切り札として期待されるのがワクチンだ。松本教授は「現在、国内で用いられているワクチンの有効性はかなり高いので、重症化しやすい高齢者への接種が進めば、それだけ重症患者が減る。そうなれば医療機関への負担は軽減されるだろう」と言う。ただ、ワクチンが十分な効果を上げるためには接種終了後も2週間程度が必要になり、マスクなどの着用は引き続き必要だとしている。
「第4波」の特徴は若い世代が感染者の多くを占めているという点だ。松本教授は「ワクチンにより感染拡大を抑制するためには高齢者だけでなく、20~30歳代の若年層にまでワクチン接種が行き渡らなければならない。さらに変異ウイルスは現在接種対象ではない16歳未満でも感染しやすいため、今後海外のデータを踏まえて接種対象となる年齢をさらに拡大していくべきだ」と話す。
今後、国内のワクチン接種をさらに広げていくためには、医師など接種スタッフや会場の確保など多くの課題を解決しながら、さらなる体制の整備が求められる。(了)
(2021/05/27 05:00)
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