治療・予防

命に関わる便秘症
~「いきみ」に注意(横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 中島淳教授)~

 便秘症は症状があっても軽く見られる傾向がある。しかし多くの研究から便秘症が生存率を低める疾患だということが分かってきた。慢性便秘症のガイドライン作成に関わった横浜市立大学大学院医学研究科(横浜市)肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授に話を聞いた。

前かがみでの排便が効果的

前かがみでの排便が効果的

 ▽トイレで心停止も

 藤田保健衛生大学の2006年~09年の統計によると、救急搬送された患者の11%がトイレで倒れたという。原因は脳卒中、心筋梗塞、動脈瘤(りゅう)破裂、くも膜下出血などの循環器病が挙げられる。

 とりわけ高齢になると、動脈の弾力性がなくなる。「若い人はトイレでいきんでも血圧はあまり変わりませんが、高齢者は上がります。便秘があるとさらに急激に上がることもあり、命に関わります」

 最近の研究では、便秘症で慢性腎臓病の発症率が上昇することも分かった。腸内に何日も便がたまることで、腸内細菌が腎臓に悪い物質を産生するためという。

 ▽排便は「迅速」「完全」が理想

 「人間の直腸は、安静時には肛門を支える恥骨直腸筋に引っ張られて『く』の字に曲がっていますが、排便時にはこの筋が緩んでまっすぐになります。それで便がスムーズに出ますが、高齢になるとまっすぐになりにくくなるのです」と中島教授。

 対処法はトイレで前かがみになること。肘がももに付くくらいにすると、直腸が鈍角になって便が出やすくなる。

 また、便秘症は便の形状からも分かる。硬さを判断する便形状スケールによると、正常便はバナナ状の便。「軟らか過ぎると、半分は逆流して大腸の奥に行ってしまい、強い残便感を伴います。そのため、何度もトイレに行くことになります」。「迅速」かつ「完全」であることが満足度の高い排便である。

 便秘症の薬物治療としては、緩やかな作用の下剤と強い下剤の使い分けが重要だ。現在、一般的に使われている緩やかな下剤の酸化マグネシウムは、高マグネシウム血症を起こすことがあるため、注意が必要。強い下剤の使用が習慣化すると、腸自体が動かなくなることもある。

 このため中島教授は「定期的な便検査が必要です。便秘が3日以上続いたら、医療機関を受診してください」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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