認知症によって食行動が変化=病気の理解で介護負担も軽減
認知症は、脳の萎縮によって認知機能などに障害が起きる病気の総称で、障害の起きる脳の部位によってさまざまな症状の違いが見られる。食行動の変化もその一つ。認知症の種類によって特徴的な症状があることから、病気への理解を深めることは、介護者の負担軽減につながる。昭和大学病院付属東病院(東京都品川区)神経内科の四郎丸あずさ医師に聞いた。
◇食べたことを忘れる
認知症を疑う症状の代表的なものとして「物忘れ」が知られているが、「食行動の変化も気付きのきっかけとなることがある」と四郎丸医師は説明する。
認知症の中で最も患者が多いアルツハイマー型認知症は記憶障害が顕著で、「人の食事満足感は脳でも感じるため、胃は膨らんでも脳が満足感を忘れるとまた食べたくなります」という。さらに、食事だと認識できず食べ始めることができない(失認)、箸などをうまく使うことができない(失行)、嚥下(えんげ)困難など、食行動一つにもさまざまな症状がある。
「アルツハイマー型認知症の人は、本当は失認や嚥下困難などの理由で食べられない場合でも、『ご飯のにおいが気になるから食べたくない』『もう長年食べてきたから飽きた』など、別の理由を挙げることがあります。本人の言葉は否定せず、背景にある理由を考えていくことも重要です」と四郎丸医師。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血による運動まひや感覚障害で食事ができない、誤嚥しやすいなどの症状が見られる。「小さな脳梗塞などがたくさんある場合、無気力になって外に関心が向かなくなることがあります。そうした場合には食事を介助したり、家族と食卓を囲んだりすること、季節感のあるメニューにするなどの工夫が有効です」と説明する。
(2017/09/23 09:49)