高気温で結核リスク増か
~全国データを解析(新潟大学大学院 我妻圭太博士)~
結核は結核菌という細菌による慢性感染症で、全国で毎年約1万人が新たに発病している。
新潟大学大学院国際保健学分野(新潟市中央区)の我妻圭太博士らは、全国47都道府県の結核の新規感染者数と気温との関連を解析。その結果、結核発生リスクは平均気温4~5度で最も低く、高温になると増加する傾向が示された。我妻博士は「結核は過去の病気ではなく、気温が上昇すると感染がさらに広がる恐れもあります」と警鐘を鳴らす。

人口10万人当たりの日本と各国の結核罹患率
◇発見遅れ、重症化
結核は、患者がせきやくしゃみをした際に排出された結核菌を含む微細なエアロゾル(飛沫=ひまつ=核)を、肺に吸い込むことで感染する。健康な成人では結核菌に感染後10年間に5~10%が発病するとされる。「免疫機能の弱い乳幼児や高齢者、糖尿病など併存症のある人も結核を発病しやすいと言われています。肺結核はせきやたん、発熱など風邪のような症状が続くために発見が遅れ、集団感染や重症化に至るケースも少なくありません」
2022年に全国で発生した新規結核患者は1万235人で、70歳以上が65%を占める。「日本の結核罹患(りかん)率は欧米よりも高い水準にあり、科学的根拠に基づいて各地域の流行状況に合った結核対策を講じる必要があります」
一般的に感染症の流行には気温などの環境要因も影響を及ぼすが、「結核発病リスクに気温がどの程度影響するのかについて、長期的に調べた全国規模の研究はありませんでした」
◇都道府県差も
そこで我妻博士らは、07~19年の13年間に発生した新規結核患者33万5060人について、まず都道府県別の結核発病に平均気温の変化が及ぼす影響を推定。メタ解析という手法を用いて全国平均を算出した。
その結果、全国的に結核発病リスクが最低になる平均気温は4.5度と判明。4.5度に比べて、最も高い平均気温の30度ではリスクが約1.5倍に増加すると推定された。
ただし地域ごとに見ると、リスクが最低になる平均気温は、北海道では19度、沖縄県では15度など差があった。「気温が及ぼす影響は、都道府県によって大きく異なることを意味しますが、その原因は今後解析する必要があります」
極端な気温でリスクが増加する一因として、室内で過ごす時間が長く、狭い空間で他者との接触機会が増える可能性が考えられるという。
我妻博士は「結核の公衆衛生施策は、地域の気象条件を考慮して調整することで効果が高まる可能性があります」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/12 05:00)
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