炎症性腸疾患の患者体験アプリ
~授業中でも「3分以内にトイレ」~
◇食べられないものが多い
クローン病は、腸が中心だが口から肛門まで消化管のどの部位にも起こり得る疾患。発症年齢が若年男性に多いのも特徴だ。
下痢、腹痛が主な症状で、肛門に炎症がある場合は痔(じ)のような病変も現れ、痛みで座れない患者もいる。
活動期と寛解期があり、治療は潰瘍性大腸炎で使われるのと同じような薬剤で炎症を抑える。
また、食事が病態の悪化に関連することが分かっていて、再燃を防ぐため、寛解期であっても一定の食事制限が必要だ。低脂肪で食物繊維の少ない、消化がいい食事を取ることがいいと言われている。

トイレに間に合わなかった体験では、患者の声が紹介される
◇患者の実情を体験
In Their Shoesは「あなたの立場に立って」という意味の英語。「患者の気持ちをもっと知るために」という考えから、武田薬品はIBDの啓発活動を始め、アプリ開発はその一環だ。当初は社内向けだったが、現在はイベント開催などの機会に、不定期ではあるが一般の人にも体験してもらっている。
「トイレに行ってください。3分以内です」―。授業中でも会議中でも、電車の中でも、こうした指令が通知で届く。「指令が届くとカウントダウンが始まり、トイレに到着したことが分かる写真を撮影しないといけない。その後、アプリから『これが患者さんの日常です』や『間に合わないと、実際には下着を履き替えます』など返事が来る」と、同社広報の金生竜明(かのお・たつひろ)さん。
参加者には事前に体験セットも配布され、腹痛を体験するためにおなか周りを縛るひも、おむつ、血便後の便器内を再現する赤インクなどが入っている。
今回の参加者の設定は「3年前にクローン病と診断」。体験後の報告会では「トイレの回数が多くて驚いた、想像以上」「初めて利用する駅でトイレを見つけられなかった」「公衆トイレの大切さ」とトイレに関する感想が目立った。また、「食べられる物がメニューに無い」「好物の辛い物が食べられなくてつらかった」といった食事面について、腹痛、尿漏れパッドの不快さなど多岐にわたった。
一方、「あまりに気を使われるとこちらもストレス。理解してもらっていればそれで十分なのに、と感じた」など、過度な対応も患者にとってよくないことが話題になった。
これらを踏まえて、確実に実行できるIBD患者中心の行動とは何かを全員で議論。学生の一人は「会社を経営している家族に話した。家族は自分の会社で社員に話を共有してくれた」とすでに実行に移していて、他の参加者たちを驚かせていた。その他、「駅のトイレなどで自分に余裕がある場合、困っている人がいたら順番を譲る」「クラスの友だちに話す」などが挙がった。
金生さんは「患者の立場に立って気持ちを想像し、症状だけでなく生活への影響も考えて、どんなことに困るのか、これからも理解を深めていきたい。患者さんが自分らしく生活できることが目標の一つ」と語った。(柴崎裕加)
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(2025/03/28 05:00)
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