治療・予防

深刻な後遺症も
単純ヘルペス脳炎

 少し前まで元気に生活していた人が、ある日突然、命を落としたり、重度の後遺症で社会生活に支障が出たりする。「単純ヘルペス脳炎」という病気にはこうした怖さがある。日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)神経内科の亀井聡部長は「早期に治療を始めないと死亡のリスクが高まり、後遺症も重くなります」と強調する。

 ▽年齢、性別関係なし

 単純ヘルペス脳炎は、主に単純ヘルペスウイルス1型(HSV―1)の初感染、または免疫力低下による再活性化で起こる重い急性脳炎だ。同じウイルスで発症する口唇ヘルペスはよく見られるが、脳で発症すると死亡することもある。日本の患者発生数は年間400~500人とされ、年齢や性別は関係ない。

意識障害で救急搬送されるケースも
 最初に発熱や頭痛が表れるが、数日後に意識障害、けいれん発作を起こし病院に運ばれることが多い。以前は死亡率が60~70%だったが、抗ウイルス薬「アシクロビル」の登場以降は20%以下に減少した。それでも深刻な病気であることには変わりはない。

 ▽一刻も早く治療を

 治療で命を取り留めても、寝たきりや認知機能障害、記憶障害など重度の後遺症が残ることが多く、社会復帰できる患者は半数程度にとどまる。亀井部長は「治療に着手した時点の意識障害が重症なほど予後は悪くなるので、できるだけ早く治療を開始することが大切です」と繰り返す。

 脳卒中や糖尿病などは普段から生活習慣に注意すれば予防できる可能性が高まるが、単純ヘルペス脳炎の予防は難しい。免疫力の低下も測定できないため、早期治療が唯一の手だてとなる。

 早期の治療を実現するためには周囲の人が患者の変化に気付くことが何より大切だ。亀井部長は「発熱や頭痛が表れる前に、(錯乱やせん妄、異常行動といった)精神症状が発症することが少なくないので、そうした状態を見つけた場合は脳炎の可能性もあるので、見落とさないことが大事です」と呼び掛けている(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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