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自身のがんにショック
「がん専門医」中川恵一氏の体験記〔1〕

 膀胱がんは人口10万人当たり10人程度の発生率で、男女比は3対1と男性に多く、60歳以降の高齢層に多く見られます。危険因子として確立しているのは、特定の化学物質を除けば喫煙だけ。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんが喫煙のために発生するといわれます。コーヒーについては結論が出ていませんが、大きな影響はないと考えてよいと思います。

膀胱内の内視鏡の画像に浮かび上がった主要部(左部分)

 ◇「なぜ、私が…」

 たばこは吸いませんし、ジョギングなどの運動は毎日行っていて、体重も若いころのままです。正直、自分が膀胱がんになるとは思っていませんでした。「なぜ私が…」と信じられない気持ちでした。

 私がこのがんにかかった理由などありません。運が悪かったとしかいえないと思います。膀胱がんの8割で血尿が見られ、早期発見のカギになりますが、私の場合、これも自覚できませんでした。もちろん、なんの症状もなく、エコー検査を自分でしていなければ、がんはもっと進行して大掛かりな手術が必要になったり、完治が期待できない状態まで発見できないでいたりした可能性があります。こう考えれば、まさに脂肪肝さまさまで、本当に幸運だったと思います。同僚の医師からも「良かったね。おめでとう」などと言われました。

 ◇知識の有無が運命左右

 こんな自分の経緯を振り返っても、病院で進行がんの患者を待っているだけではがんによる不幸を減らすことができないと考えています。がん治療の傍ら、がんに関する啓発活動が必要と考えて取り組んできたのは正しかったのでしょう。なぜなら、がんはわずかな知識の有無で運命が変わってしまう病気だからです。

中川恵一東京大学医学部准教授

 例えば、乳がんのため亡くなった元アナウンサーで歌舞伎役者の市川海老蔵さんの夫人の小林麻央さんも、がんになる前にある程度の知識があれば34歳の若さで命を落とすことはなかったと、私は思います。このためにも、学校でのがん教育の推進にも一役買いました。中学校、高校の学習始動要領にがん教育を明記してもらうこともできました。次回は私が受けた治療を振り返ります。(このシリーズは毎週火曜日に配信します)

【略歴】中川恵一(なかがわ・けいいち)
東京大学医学部准教授、同付属病院放射線治療部門長。1960年生まれ。85年東京大学医学部卒業、同部専任講師などを経て現職。厚生労働省「がん対策推進企業アクション」議長なども務める。「最強最高のがん知識」「がんの時代」など著書多数。

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