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アジアから輸入された「はしか流行」
~強い感染力、抗体がない人は要注意~ 前田美穂・日本医科大学名誉教授

 麻疹(はしか)が流行しています。かつては多くの人がかかっていた病気で、あまりニュースに取り上げられることもなかったようですが、このところ非常に警戒レベルが高くなっている感じがします。そこで日本医科大学名誉教授の前田美穂先生に麻疹について伺いました。

 ◇去った後でも空気感染

 海原 麻疹に関する報道を見ることが多くなりました。

 前田 特に最近の麻疹が重症化しやすいと言うことでなく、麻疹は今でも死亡することがある、極めて重篤な感染症だから、報道が多いのだと思います。また、感染力が強いことも問題です。死亡率は、先進国であっても1000例に1例程度あるといわれています。

 麻疹の感染経路は、飛沫(ひまつ)感染、接触感染のほか、空気感染があることで、対策が困難になってきます。麻疹ウイルスは1時間以上、感染性を保って浮遊するため、麻疹の人がいた空間では、その人がいなくなっても麻疹ウイルスが残り、それを吸引することによって感染を起こします。


 海原 日本は麻疹排除国になったと記憶していますが、今流行しているのはなぜですか。

世界保健機関(WHO)本部=スイス・ジュネーブ(AFP時事)


 前田 2015年に日本は世界保健機関(WHO)から麻疹排除の認定を受けました。麻疹ウイルスには、いくつものタイプがあり、現在、日本で流行する麻疹は日本に土着していた麻疹とは異なるタイプです。海外からの輸入麻疹、特に東南アジアのタイプが多いと言われています。

 海外で感染した人から感染が広がっています。仮に同じ由来の株による麻疹の流行が1年以上続き、土着株になると、WHOから麻疹排除の認定が取り消される可能性があります。

 ◇抗体のない人、ほぼ100%発症

 海原 予防策は予防接種以外に難しいのでしょうか。

 前田 抗体のない人では、麻疹ウイルスに感染すると、その発症率はほぼ100%といわれ、感染力が大変高い疾患です。

 麻疹の予防は、ワクチン接種が最も重要と言われています。2回接種することにより、99%以上の抗体陽性が確認されています。

 麻疹ウイルスは、抗体を持っていない人に次々と伝搬していくと言われており、確実な2回接種が推奨されています。

 ◇潜伏期は8~12日間

 海原 どのような症状が出ますか。

 前田 8日間から12日間の潜伏期を経て症状が出ます。まず、カタル期といって、せきや鼻水が出て、かぜのような症状とともに、眼脂(目やに)を伴う結膜炎のような症状が出ます。38度、あるいはそれ以上の発熱も2~4日間ぐらいみられます。

 発症後2~4日間に頬の内側の口腔(こうくう)粘膜に、周囲が赤い、直径1ミリ程度の白い斑点が複数個できます。これはコプリック斑といい、発疹が出現する頃には消えてしまいます。

 このあと一度、半日ぐらいのことが多いですが、熱が1度くらい下がり、その後、発疹の出現とともに40度もの高熱が出ます。これを発疹期と言っています。

 発疹は耳の後ろから始まることが多いと言われ、2~3日かけて顔、首、体幹、四肢末端に広がっていきます。初めは小さな紅斑、丘疹ですが、だんだん融合していき、出血斑が見られることもあります。

 発疹が全身に広がるまで、3~4日間は高熱が続きます。その後、発疹は暗赤色になり、しばらくの間、色素沈着が見られますが、徐々に消失します。これを回復期と言います。

 この頃に発熱も徐々に収まりますが、発熱が続くときは、2次的な細菌感染症を考える必要があります。



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