「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~

リバウンドした第6波
~年末までの流行を予測~ (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第42回】

 2022年4月、国内ではオミクロン株による第6波の流行がリバウンドを起こしており、このまま第7波になることが懸念されています。その一方で、世界的には新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向にあり、オミクロン株の流行は収束に向かっているようです。こうした状況から、欧米諸国などでは流行対策の大幅な緩和が進んでいます。日本でも新型コロナと共存しながら社会や経済の再生を進める動きが見られていますが、そのためには中長期的な観点で流行を見ていく必要があります。そこで今回は、新型コロナの年末までの流行状況を予測してみました。

記者会見する新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長=2022年04月08日

記者会見する新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長=2022年04月08日

 ◇日本での再増加

 日本では22年1月から、新型コロナウイルスのオミクロン株による第6波の流行が始まり、2月初旬をピークに感染者数は減少傾向に向かいました。しかし、その減少スピードは遅く、3月末の時点で1日の感染者はピーク時の半数近くの4万人前後に高止まりしていました。この数が4月に入り再増加しており、沖縄など一部の自治体では第6波のピーク時に近い数値になっています。こうした状況から、第6波が収束しないまま第7波が始まるとの見方もされています。

 今回のリバウンドの原因としては、年度替わりやお花見の時期が重なったため、行事や飲食など接触の機会が増えたことが第一に挙げられます。また、オミクロン株の中でも感染力の強いBA.2型が増えていることも原因の一つです。

 前者の原因は一過性の問題ですが、BA.2型の拡大は今後も進行し、5月初旬までには国内のオミクロン株の全てを占めると予想されています。

 ◇世界的には流行収束の方向

 BA.2型の拡大は世界的な兆候であり、世界保健機関(WHO)の最近の報告では、世界各国で検出されるオミクロン株の9割以上がBA.2型になっています。その一方で、世界の感染者数は現在、減少傾向にあるのです。

 つまり、世界的にはオミクロン株がBA.2型に置き換わっていますが、オミクロン株の流行そのものは収束してきています。例えば、早い時期からBA.2型に置き換わっていた南アジアでも一時的に感染者数は増えましたが、流行はほぼ収束しました。感染力が強いのになぜ早々に収束しているかですが、過去の感染やワクチン接種などによる集団免疫が影響していると考えられています。

 こうした世界状況を参考にすれば、日本でもBA.2型の拡大は今後進行していきますが、ワクチンの再接種率を高め、予防対策を推進することでリバウンドはある程度のレベルで抑えられると思います。

 ◇オミクロン後の世界

 欧米諸国ではオミクロン株の流行が収束に向かっていることを受けて、流行対策の緩和が急速に進んでいます。これは、ワクチン接種の拡大や治療薬の登場などにより、感染者が増加しても重症者は増えないことが背景にあります。さらに、新型コロナの流行から2年以上が経過し、社会や経済を再生していくことが求められているからです。

 日本もこうした方向に進む必要がありますが、そのためには二つの条件をクリアしなければなりません。まずは、現在の第6波(地域によっては第7波)の流行が収束すること。収束とは言っても、感染者がゼロになることを目標にするのではなく、ある程度の数の感染者発生は容認しなければなりません。もう一つの条件は、ワクチンの3回目接種率が6割近くに達していること。これは重症者を増やさないための保障として必要です。

 日本ではこうした時期が5月から6月ごろには訪れると予想されます。その後、秋までは落ち着いた時間が過ぎていくと思います。新型コロナウイルスのように呼吸器感染症を起こすウイルスは原則的に寒い時期に流行が拡大し、夏の時期の流行は少ないからです。

 ただし、この間にオミクロン株やデルタ株の残り火から小さな流行の波が起こるかもしれません。それにより感染者数がやや増えても重症者はあまり発生しないでしょう。

 この時期には、国民の皆さんも予防対策を一時的に緩めることができると思います。

 ◇秋以降の大きな波

 こうした夏の小康期を経て、秋以降に再び新型コロナの大きな流行が起きると予想されます。これは先に述べたように、呼吸器感染症を起こすウイルスは原則的に寒い時期に流行するからです。さらに秋以降は、ワクチン接種による免疫効果が減衰してくる時期にもなるからです。

 では、この時期にどんな種類のウイルスが流行するのでしょうか。まずは、夏の間、潜んでいたオミクロン株やデルタ株が再燃することが考えられます。また、新たな変異株がこの時期までに発生していれば、それが大流行を起こすことも想定されます。

 こうした秋以降の大きな流行を抑えるためには、国として流行対策を強化するとともに、国民の皆さんにも再び予防対策の強化をお願いすることになるでしょう。また、流行前にワクチンの4回目接種を進めることも必要になってきます。

4回目接種を受ける養護施設入居者(イスラエル中部ネタニヤ)=2022年01月05日 AFP時事

4回目接種を受ける養護施設入居者(イスラエル中部ネタニヤ)=2022年01月05日 AFP時事

 ◇4回目の追加接種

 現在、日本ではワクチンの3回目接種が行われていますが、厚生労働省は5月末ごろから4回目の追加接種を行うことを計画しています。ただし、この4回目接種は対象を絞り、高齢者や医療従事者などのハイリスク者が中心になる予定です。国民全員を対象とした本格的な4回目接種は秋ごろ、すなわち次の大きな波が起こる前になるでしょう。4月初旬、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が4回目接種に関する見解を発表しており、この中でも、当面の4回目接種はハイリスク者に限り、一般の人への接種は秋にすべきだと述べています。

 問題は、どのワクチンを使うかですが、現在使用しているワクチンは19年に中国で発生したウイルスを元に製造されており、秋以降の流行への効果が弱いと予想されます。このため、現在のオミクロン株やデルタ株をターゲットにした新たなワクチンを製造し、それを使用することが必要になるでしょう。一部のワクチンメーカーでは既にその開発に取り掛かっています。

 以上、22年の流行予測とその対策を紹介してきました。21年の夏はデルタ株の発生により日本でも第5波の流行が起こりました。今年は脅威となる新たな変異株の発生が見られていませんが、そのような事態が起きると、今回の予測とは違う方向に進む可能性もあります。読者の皆さまにはその点もお含みおきください。(了)


濱田 篤郎 特任教授

濱田 篤郎 特任教授

 濱田 篤郎 (はまだ あつお) 氏

 東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。

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