こちら診察室 知ってる?総合診療科

第3回 全医師に必要な「総合力」 
大学病院の役割と教育 ~総合診療医の出番です~

 ◇あらゆる医師に必要 

 例えば「腹痛」が主な症状で受診された場合です。まずは胃や腸などの消化器の疾患を疑いますが、それだけではすみません。尿路結石など泌尿器系の疾患があり得ますし、女性の場合は産婦人科系疾患も考えなければなりません。 

 最初に総合診療科で診察するのは、これら全ての分野を想定して診るからです。 

 しかし、総合診療医の数は少ないのが現実です。救急でも1次や2次の患者を総合診療科ですべて診察するのは無理です。腹痛の患者を診察する消化器内科医が婦人科や泌尿器科の医師に患者を回すかどうかの判断をできるようにしておくことが必要になっています。 

 専門がどんな診療科でも、医師は適切に初期診療して、適切な診療科に振り分けられるのが理想です。そのためには、あらゆる医師がプライマリ・ケアについて学ぶ必要があるのです。 

臨床現場は日々勉強。先輩ドクターより指導を受ける=東京都新宿区の東京医大病院

臨床現場は日々勉強。先輩ドクターより指導を受ける=東京都新宿区の東京医大病院

 ◇プライマリ・ケア修得 

 医師を育てる大学病院の総合診療科は、プライマリ・ケアを学ばせる大きな役割を果たしています。現在、医学生は卒業後に2年間の初期臨床研修が義務付けられており、その到達目標がプライマリ・ケアの修得です。 

 しかし、専門ごとに診療科が細分化された大学病院でプライマリ・ケアをどのように研修・修得させるかは大きな問題でした。かつては、この分野を担当する診療科がほとんどの大学に存在しなかったからです。 

 ◇ほとんどの大学病院が創設 

 ここ数年の間にほとんどの大学病院で総合診療科あるいは総合診療部が創設されました。大学病院によっては救急外来に重点を置いたり、総合内科という名称で一般内科の診療をしていたりしています。 

 特徴は異なっていますが、それぞれがプライマリ・ケアを担当し、研修医の教育に力を入れていることは共通しています。 

 初期臨床研修医の到達目標はプライマリ・ケアの修得ですから、医学生の段階からプライマリ・ケアを学ばなくてよいはずがなく、大学の教員は在学中からプライマリ・ケアを教育しなければなりません。 

平山陽示教授

平山陽示教授

 総合診療科の教員が医学生に対して基本的臨床技能や症候学、臨床推論の教育を担当している大学が昨今、多くなっています。(東京医科大学臨床教授 平山陽示) 

平山陽示氏(ひらやま・ようじ)
1984年東京医科大学卒。88年米国ミシシッピー州立大学生理学教室留学。東京医大第2内科講師、准教授など経て2012年臨床教授。11年東京医大病院総合診療科科長、12年から20年まで卒後臨床研修センター長兼任。2000年から禁煙外来を担当している。循環器専門医、プライマリ・ケア認定医・指導医、禁煙専門医、産業医。

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