鈴木茂彦 医師 (すずきしげひこ)

京都大学医学部附属病院

京都府京都市左京区聖護院川原町54

  • 形成外科
  • 科長、教授

形成外科 皮膚科

専門

熱傷・ケロイド・瘢痕および瘢痕拘縮,口唇裂・口蓋裂,顔面の先天的後天的変形,母斑(アザ)・皮膚腫瘍

鈴木茂彦

京都大学医学部附属病院形成外科は1977年4月に開設され、日本の国公立大学の中でも2番目という歴史を持つ。鈴木茂彦医師は開設と同時に入局した一期生。形成外科先般に精通するが、とくに同院形成外科の看板の1つであるやけど(熱傷)とキズあと(瘢痕・ケロイド)の治療に実績を築き上げてきた。この分野に関して数多くの教科書や論文を執筆している。さらに熱傷や瘢痕の治療に有効な人工皮膚の研究で知られており、鈴木医師の開発した人工真皮は現在世界中で使用されている。まさに熱傷・ケロイド治療の第一人者といえよう。
重症熱傷の治療に当たっては同院救急部(小池部長)・集中治療部(ICU)とタイアップしておりチーム医療を重視している。
熱傷や外傷後の瘢痕,ケロイドの治療に関しては、鈴木医師はひきつれ(瘢痕拘縮)を完全に解除したうえでできるだけ目立つ瘢痕を減らすことが大原則であるとしている。さらに、健常皮膚の犠牲を最小限にとどめなければいけないと述べている。そのため、鈴木医師は専門誌に発表した種々の手術術式を症例に応じて使い分けている。ティシュエキスパンダーや人工真皮の併用も積極的に行っている。
鈴木医師は熱傷や瘢痕の他に口唇裂・口蓋裂,小耳症,母斑(アザ)などの先天異常疾患も専門とし「できるだけ目立つ瘢痕を残さない」というポリシーを持って治療にあたっている。
適切な診療はQOL回復につながる。それは患者の喜びであるとともに、医師にとっても大きな喜びと達成感をもたらすという。

診療内容

広範囲重症熱傷は初期にはICU、救急部が全身管理を担当し、形成外科は局所治療を担当している。症例に応じ、救命のための早期植皮が行われる。同院は特定集中治療施設に認定されており、培養表皮(ジェイス)の使用が可能である。ICU離脱後は一般病床で治療が継続されるが、熱傷治療ベッド、熱傷治療用シャワー室など設備は充実している。重症治療の治療には救急医、形成外科医、看護師のチーム医療が重要である。生命に支障のない熱傷については、患者の状況によって植皮手術の適応や時期をきめ細かく決めている。治療期間が長くなっても瘢痕をなるべく減らしたい乳幼児では、採皮部の犠牲を考慮してなるべく植皮をしない。
「軟膏療法などで治すと瘢痕が残りますが、瘢痕はあとでゆっくり治せばよいからです」(鈴木医師)
一方早く職場や家庭に復帰したい成人では早めに植皮を行うという。熱傷やケガ(外傷)、手術後のキズが治っても必ずキズあと(瘢痕)が残る。 それは徐々に目立たなくなるが、何らかの原因で炎症症状が持続すると、キズは赤みを保ったまま盛り上がり肥厚性瘢痕となる。肥厚性瘢痕は炎症症状が落ち着くと、赤みが薄れ平らなキズあと(成熟瘢痕)となるが、いつまでも炎症症状が治まらず成熟瘢痕化しないことがある。一方キズは収縮し、ひきつれ(瘢痕拘縮)を生じる。関節部のひきつれは、重篤な機能障害をきたす。拘縮は、肥厚性瘢痕がいつまでも平らにならない一因でもある。「このような瘢痕拘縮や肥厚性瘢痕は治療の必要がある。 また成熟瘢痕でも、ひきつれがあったり、色素沈着したり、逆に色素が抜けて白くなったりしてキズあとが目立つ場合も治療の対象であるという。
「私たちは数多くの新しい治療方法を考案し、キズあとをきれいに治す工夫をしています」(鈴木医師)。 瘢痕をできるだけ目立たなくすることが、形成外科の基本。瘢痕は多かれ少なかれ拘縮を伴っているので、まず拘縮を解除し目立つ瘢痕をできるだけ縮小させる手術を行っている。またティシュエキスパンダー(組織の拡張器)を用い、瘢痕切除部を再建する方法も行われている。 植皮を要する場合は採皮部の犠牲を減らすために、必要に応じて鈴木医師が開発した人工真皮を使用する。
皮膚は表層の表皮と下層の真皮から成っており、表皮を形つくっているのは角化細胞と呼ばれる細胞。真皮を主に形つくっているのは力学的強度を保つための丈夫なコラーゲン線維と伸び縮みできる弾性線維だ。これらの線維を作る細胞は線維芽細胞と呼ばれる。人工真皮は、失った皮膚の代わりとして開発された。真皮を再生する能力を持っていることから人工真皮とも呼ばれている。鈴木医師が開発した人工真皮ペルナックは、ブタ由来のコラーゲンをスポンジ化させたものを薄いシリコーン膜で覆った構造を持っている。ブタの皮膚は昔からヒトの皮膚に近いことから、重症熱傷の治療に用いられてきた。人工真皮を皮膚の欠損部に移植すると、キズ口から線維芽細胞と毛細血管がコラーゲンスポンジの空隙の中へ侵入し増殖する。線維芽細胞はスポンジ内で増殖し、新しいコラーゲンを作りだす。毛細血管も分岐しながら延長していく。一方コラーゲンスポンジは少しずつ分解吸収され、やがてもとのコラーゲンスポンジは、新しく再生した真皮様組織に入れ替わる。皮膚の欠損部が狭い場合は、表皮細胞はキズの周囲から真皮の上を伸びていき、やがて全体が表皮に覆われる。皮膚の欠損面積が広い場合は、皮膚移植が必要であるが、真皮様組織が再生しているため、ごく薄い植皮でもきれいに生着するので採皮部の犠牲が少ない。また、表皮細胞を培養して作られる培養表皮シート移植も可能である。長期間経過すると真皮様組織内に弾性線維も再生する。
「人工真皮は熱傷や瘢痕の治療の他、けがや手術で失われた皮膚欠損部,大きな黒あざ(巨大色素性母斑)の治療にも使われています」(鈴木医師)
ケロイドについては以下のとおり。
単なる「キズあと」や「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」は異なる。ケロイドは、 元のキズの範囲を超えて隆起しながら拡がっていく。再発しやすく治療も困難。
ケロイドの治療としてはステロイドの局所注射が有効。局所麻酔剤を混ぜてゆっくりと注入することで注射の痛みを和らげることができるという。根気強く局所注射を続けることで、症状は改善する。また切除手術も行われるが、ケロイドは手術治療単独では再発率がきわめて高いため、放射線科の協力を得て、術後の放射線治療を併用することで再発率の減少を図っている。さらに鈴木医師が指導する形成外科の研究グループは、ケロイド内に特異な因子等が存在していることを発見した。「私たちの研究結果から、近々新しい治療方法が産み出される可能性があります」(鈴木医師)
「口唇裂・口蓋裂および小耳症、巨大色素性母斑などの先天性疾患の治療もキズを最小限にしてきれいに治すという点ではポリシーは同じです」(鈴木医師)
これらの治療件数も年々増加しており、特に口唇裂・口蓋裂患者の手術数では全国で2番目に多い施設となっている。

医師プロフィール

1977年3月 京都大学医学部 卒業
1977年4月 京都大学医学部附属病院形成外科研修医
1978年4月 浜松労災病院形成外科医員
1980年9月 京都大学医学部附属病院形成外科医員
1987年3月 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士取得
1987年4月 京都大学医学部附属病院形成外科助手
1988年6月 兵庫県立尼崎病院形成外科医長
1989年6月 京都大学医学部形成外科講師
1992年10月 同助教授昇任
1999年11月 香川医科大学形成外科学教授
2003年1月 京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座形成外科学教授