鈴木茂彦 医師 (すずきしげひこ)

労働者健康福祉機構 浜松労災病院

静岡県浜松市東区将監町25

  • 形成外科
  • 病院長

形成外科 皮膚科

専門

熱傷・ケロイド・瘢痕および瘢痕拘縮、口唇裂・口蓋裂、母斑(アザ)、腫瘍切除後の再建外科、その他キズの治療すべて

鈴木茂彦

鈴木茂彦医師は、京都大学医学部附属病院に形成外科が開設された1977年に入局した一期生。翌年から浜松労災病院形成外科で勤務し、重症のヤケド(熱傷)やキズアト(瘢痕)の治療を多数経験。その後京都大学に戻るが、この浜松労災病院での経験が終生の研究テーマを「瘢痕の制御」と「皮膚の再生」とするきっかけになる。2018年4月から浜松労災病院に院長として勤務している。
形成外科領域全域に精通。特に熱傷・瘢痕・ケロイドと口唇裂・口蓋裂治療に実績があり、数多くの教科書や論文を執筆。初論文は1980年、胸部の熱傷のために乳房発育不全になった女性患者に行った乳房再建手術である。当時の先端医療であった筋皮弁を用い、キズアトが目立たないように気を配った手術であった。現在に至るまで一貫して「目立つキズアトを残さない、新たなキズアトを作らない」というのが鈴木医師の治療に対するポリシーである。
鈴木医師は人工真皮を開発し、市販開始後すでに20年以上経過するが、現在も世界各国で使用されている。さらに近年は床ずれや足の慢性潰瘍などにも使用可能な、血管の再生を促すタンパク質「塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)」を少しずつ放出する機能をもつ新しい人工真皮の開発にも成功し、2018年4月に国の承認を得た。

診療内容

熱傷は形成外科医を主としたチーム治療を行っている。広範囲熱傷では救命のため早期に皮膚の移植(植皮)が必要。しかし植皮を行うと皮膚を採った部位(採皮部)にキズアトが残るので、生命に支障がなければなるべく植皮をしない方針。丁寧な診察後、植皮手術の適応や時期をきめ細かく決めている。「植皮をしないで熱傷を治してもキズアトは残りますが、採皮部がなければキズアトは少なくなります。熱傷のキズアトはあとでゆっくり治せばよいです」(鈴木医師)。
ただし、職場や家庭に早く復帰したい場合は早めに植皮を行うこともあるという。
キズアトの治療。熱傷だけでなく、ケガや手術後のキズが治ってもキズアトが残る。 キズアトは徐々に目立たなくなる(成熟瘢痕)が、何らかの原因で炎症症状が持続すると、キズは赤みを保ったまま盛り上がり肥厚性瘢痕と呼ばれる。肥厚性瘢痕は炎症症状が落ち着くと、赤みが薄れ平らな成熟瘢痕となる。時にキズは収縮し、ヒキツレ(瘢痕拘縮)を生じ、とくに関節部のヒキツレは機能障害をきたす。「私は数多くの新しい治療方法を考案し、ヒキツレを治しキズアトをきれいする工夫をしています」(鈴木医師)。また鈴木医師はティシュエキスパンダー(組織の拡張器)を用い、拡張した正常皮膚でキズアトをきれいにする手術が得意である。「子供さんで広範囲なキズアトのある場合は、皮膚の進展性が高い幼児期に開始したほうがいいです」(鈴木医師)。
再建手術について。「再建手術の究極の目標はキズアトをなくして元通りにきれいに治すことであり、最終目標はキズアトの手術と同じです」(鈴木医師)。乳がん術後の乳房再建でも最近はティシュエキスパンダーが保険適用になり広く使われている。
人工真皮について。
鈴木医師が開発した人工真皮(ペルナック)は、コラーゲンスポンジとシリコーンフィルムの2層構造をもっている。人工真皮を皮膚の欠損部に移植すると、キズの断端から線維芽細胞と呼ばれる細胞と、毛細血管が、コラーゲンスポンジの隙間の中へ侵入し増殖する。線維芽細胞はスポンジ内で増殖し、新しいコラーゲンを作る。一方元のコラーゲンスポンジは少しずつ分解され、2、3週間で真皮様組織ができあがる。小さなキズなら、周囲の皮膚から表皮の細胞が伸びていき、やがて全体が表皮に覆われ治癒する。皮膚の欠損が広い場合、皮膚移植が必要であるが、真皮様組織ができあがっているため、ごく薄い植皮でもきれいに生着し採皮部も早くきれいに治る。
「人工真皮は熱傷の他、けがや手術で失われた皮膚欠損部、キズアトの治療、大きな黒あざ(巨大色素性母斑)の治療にも使われています」(鈴木医師)。
さらに鈴木医師らが最近開発に成功し、臨床応用が可能になった「塩基性線維芽細胞増殖因子」を少しずつ放出する機能を持った新規人工真皮は、糖尿病を原因とする足潰瘍や床ずれなどの慢性皮膚潰瘍に有用である。それだけではなく、真皮様組織の再生が早いので従来の人工真皮を用いていた疾患にも役立つ。
ケロイドは、 肥厚性瘢痕と異なり元のキズの範囲を超えて隆起しながら拡がっていき、再発しやすく治療も困難である。ケロイドの治療には副腎皮質ホルモン(ステロイド)の局所注射が有効。局所麻酔剤を混ぜてゆっくりと注入することで注射の痛みを和らげることができる。根気強く局所注射を続けることで、症状は改善する。局所注射の代わりに副腎皮質ホルモン含有の貼付材を用いることもある。その他、切除手術も行われるが、手術治療単独では再発率がきわめて高いため、術後の放射線治療が必要。さらに鈴木医師は香川医科大学、京都大学で精力的にケロイドの基礎研究を行ってきた。「私たちの研究結果から、近々新しい治療方法が産み出される可能性があります」(鈴木医師)。
口唇裂・口蓋裂その他の先天疾患の治療。
鈴木医師が瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮の治療と並んで力を入れてきたのが口唇裂・口蓋裂の治療だ。口蓋裂学会会長、理事長を歴任しており、形を整えながらキズアトを最小限にすることを目指している。口唇裂のキズアトが少ないほど整容的に優れることは言うまでもないが、口蓋裂もキズアトを少なくすると骨の発育や言語成績の向上につながる。「口唇裂・口蓋裂および小耳症、巨大色素性母斑などの先天性疾患の治療もキズを最小限にしてきれいに治すというポリシーはすべて同じです」(鈴木医師)

医師プロフィール

1977年3月 京都大学医学部 卒業
1977年4月 京都大学医学部附属病院形成外科研修医
1978年4月 浜松労災病院形成外科医員
1980年9月 京都大学医学部附属病院形成外科医員
1987年3月 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士取得
1987年4月 京都大学医学部附属病院形成外科助手
1988年6月 兵庫県立尼崎病院形成外科医長
1989年6月 京都大学医学部形成外科講師
1992年10月 同助教授昇任
1999年11月 香川医科大学形成外科学教授
2003年1月 京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座形成外科学教授
2018年4月 独立行政法人 労働者健康安全機構 浜松労災病院 病院長