仲沢弘明 医師 (なかざわひろあき)

日本大学医学部附属板橋病院

東京都板橋区大谷口上町30-1

  • 形成外科
  • 客員教授

形成外科 外科

専門

形成外科、熱傷、再建外科、創傷外科(がん切除後・外傷による組織欠損後の再建外科、手足の外科手術、マイクロサージャリー、など)

仲沢弘明

仲沢弘明医師がポリクリ実習時、ある先生に形成外科というちょっと変わった外科がある、という話を聞いたという。しかし三重大学医学部には形成外科がなかった。「いったい何をする科なのか興味がありました。6年生の夏休みに、某大学病院の見学をさせていただく機会があり、そこで形成外科の見学がかないました」(仲沢医師)
実は消化器外科を希望していた。だが1週間の形成外科見学で様々な手術に参加し、いろいろな再建手術のスライドを見せてもらったことが仲沢医師に大きな影響を与えた。
「再建手術はこれまで見たこともないような手術で、大変興味を持ちました」(仲沢医師)
結局消化器外科の見学は取りやめて、その後もう1週間、形成外科を見学したという。この2週間の経験が仲沢医師の始まりとなった。
1975年8月におこった新宿西口バス放火事件を契機として、東京都は、重症熱傷治療の専門施設(熱傷ユニット)の設立を東京女子医科大学形成外科に委託。1982年11月に日本で最初の熱傷ユニットが開設された。仲沢医師は東京女子医科大学形成外科において研修医として、日々重症熱症患者の治療を担当。当時の熱傷ユニットは、東京女子医科大学形成外科と日本医科大学高度救命センターの2施設にしかなかったため、都内で発生した重症熱症患者はどちらかの病院に搬送された。ここで毎年100例以上の重症熱傷患者に係わる。形成外科では、入院から退院まで、すなわち急性期の輸液管理から感染対策、栄養管理といった全身管理と熱傷創の局所管理を行った。
仲沢医師は研修医終了後、2年間都立府中病院(多摩総合医療センター)外科で一般外科の研修を行い、一般外科医としての基本を学んだという。
1985年5月、東京女子医科大学形成外科に帰局後、熱傷の急性期における循環動態の研究を行う。また当時、新しい皮弁として静脈皮弁が報告されたが、従来の遊離皮弁と異なり、皮弁には動脈を含まず静脈だけの皮弁ということで、大きなトピックスとなった。仲沢医師は静脈皮弁の循環動態について実験を行うとともに、臨床的にもより大きな皮弁が生着できるように、血行形態について研究を重ねた結果、静脈皮弁の血行形態を4型に分類し、安定した臨床成績を挙げることが可能となった。このことを日本形成外科学会や日本マイクロサージャリー学会で発表したが、当時、静脈皮弁は指などの小さな組織欠損を再建する方法と報告され、大きなものは部分壊死を起こしやすく、臨床成績は不良であるというのが一般的な意見であったため、学会で発表するたびに厳しい意見が述べられたという。「しかし症例を重ねつつ、本皮弁の有用性について発表を続けた結果、徐々に静脈皮弁が認められました。現在では新しい皮弁として認知されています」(仲沢医師)
2年間の留学では、気道熱傷における肺微少血管の透過性の更新、臨床に近似した敗血症の動物モデルにて肺微少血管の透過性の更新を報告。また臨床では、受傷後24時間以内に手術するという、超早期手術により広範囲重症熱症患者が救命されていることに驚愕した。
「帰国したら超早期手術を早速実践しようと思いました」(仲沢医師)
超早期手術を実践するにあたり、どのようにしたら安全に早期に出来るのかについて検討した結果、熱症患者によく認められた低体温に注目し、この改善によって循環動態が早期に安定するのではないかと考えた。そして実験を行い、加温輸液の有用性として報告。手術の実際としてデブリードマンの方法や植皮術の工夫、スキンバンクの設立と相まって、積極的に超早期手術に取り組んできた。しかし学会で発表するたびに批判的で厳しい意見が述べられ、なかなか超早期手術は認められなかった。症例を重ねた結果、感染症から敗血症に至ることが減少し、救命率の向上が認められた。その結果について多くの報告を続け、ようやく本法の有用性が認められるに至る。現在では、日本熱傷学会の熱傷診療ガイドラインに早期手術が推奨されるようになっている。
「重症熱傷治療は、全身管理と局所管理の両方が必要です」(仲沢医師)
治療ではこの両方を重視しながら、医療安全に留意し、2重、3重のチェックを行うことと、患者に対し平易な言葉で理解できるインフォームドコンセントを行っている。平成26年度~東京都熱傷救急連絡会の会長、一般社団法人日本スキンバンクネットワーク代表理事に就任した。

診療を受けるには

日本大学附属板橋病院: 第二木曜日(9:00~11:00)
水野記念病院:毎週火曜日(9:00~16:30)

他の勤務先

■ 水野記念病院
東京都足立区西新井6-32-10
TEL: 03-3898-8080

医師プロフィール

1983年3月 国立三重大学医学部 卒業
1983年5月 東京女子医科大学形成外科 入局
1991年2月 University of Texas Medical Branch、Shriner Burn 、Institute へPostdoctoral Fellowとして留学
1993年3月 東京女子医科大学形成外科 帰局
1994年12月 同 講師
2000年2月 鹿児島市立病院形成外科 科長
2002年3月 国立病院東京災害医療センター形成外科 医長
2004年6月 東京女子医科大学形成外科 助教授
   7月 東京女子医科大学東医療センター 助教授
2007年8月 東京女子医科大学東医療センター形成外科 教授
2010年7月 日本大学医学部形成外科 主任教授
2020年3月 日本大学医学部形成外科 定年退職

所属学会

【国内学会】
日本形成外科学会(理事・評議員)、日本熱傷学会(理事・評議員)、日本熱傷学会関東地方会(常任幹事)、日本創傷外科学会(理事・評議員)、日本形成外科手術手技学会(理事)

主な著書

『形成外科49』(2006年)、『救急・集中治療16』(2004年)、『救急医学27(1)』(2003年)、『形成外科 45(8)』(2002)、『MEDICO 32』(2001年)、『医学のあゆみ238』(2011年)、『医学のあゆみ237』(2011年)、『形成外科53増刊』(2010年)、『形成外科53(2010年)、『救急医学34』(2010年)、『PEPARS34』(2009年)、『PEPARS25』(2009年)、『日本外科学雑誌 99(1)』(1998年)、『外科治療 78(4)』(1998年)、『日経メディカル (11) 』(1997年)、『形成外科 39(3)』(1996年)、『形成外科 41(11)』(1998年)

医師発信欄

日本大学医学部 形成外科学系形成外科学分野HP: http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/prs/
インタビュー:http://www.med.nihon-u.ac.jp/hospital/itabashi/topix_interview/dr_nakazawa/index.html
(更新日:2023年9月20日)