千葉茂 医師 (ちばしげる)

旭川医科大学病院

北海道旭川市緑が丘東二条1-1-1

  • 精神科神経科
  • 教授 診療科長

精神科 神経科 内科

専門

精神医学、睡眠医学、てんかん学、老年精神医学

千葉茂

日本睡眠学会認定医として、100種類近い睡眠障害を正確に診断。内科、小児科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科との連携診療の中で、どの診療科で治療すべきかを見極める、包括的な役割を担っている。とくに、注目されるのは、「睡眠クリニック」専用のビデオ・ポリソムノグラフィ専用病床の個室2床(精神・行動・生体現象モニタリングシステム)を用いた検査や治療評価。一方、てんかん、せん妄、老年期精神障害など、高次脳機能障害の病態を解明する臨床研究にも取り組んでいる。実験てんかんの分野では、キンドリング現象を用いて、てんかん発作発現に関わる脳幹の役割について、多くの新知見を発表し、北海道知事賞、日本てんかん治療研究振興財団研究褒章を受賞。

診療内容

同院精神科神経科の診療は開院と同時に開始された。一般的な精神疾患である統合失調症、気分障害、神経症性障害、器質性精神障害はもちろん、睡眠障害、てんかん、認知症、などに力を注いできた。一方、他科からの要請に応えるコンサルテーション・リエゾン精神医学にも取り組んでいる。とくに、せん妄に関する診療や臨床研究は国内外で知られており、また、ラットせん妄モデルを開発し、病態生理の解明に取り組んできた。
専門外来として「睡眠クリニック」では、日本睡眠学会認定医の千葉医師らが中心に睡眠障害に取り組んでいる。身体的健康だけでなく、精神的健康にとっても、睡眠の確保が重要と言う。
睡眠障害は、以下のように、主訴によって4つに大別できる。
1)不眠:いわゆる不眠症(精神生理性不眠)が代表的であるが、身体的疼痛や心理的ストレスによる一過性不眠や、精神疾患(たとえばうつ病)による不眠も含まれる。
2)過眠(日中の過度の眠気):ナルコレプシーや特発性過眠症、行動誘発性睡眠不足症候群、などがある。一方、夜間に十分な睡眠がとれない閉塞性睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群などは、夜間睡眠の不足を代償するための日中の過眠が生じる。
3)睡眠中に出現するさまざまな異常現象:ノンレム睡眠から生じるもの(睡眠時遊行症、錯乱性覚醒、睡眠時驚愕症)、レム睡眠に関連するもの(レム睡眠行動障害、悪夢障害)、睡眠中に出現しやすい睡眠てんかん、せん妄などがある。
4)サーカディアンリズム(概日リズム)睡眠障害:朝方から昼過ぎまで眠るというように、睡眠時間帯(睡眠相)が遅れている睡眠相後退型、睡眠相が午後8時から午前2時というように睡眠相が早まる睡眠相前進型、睡眠相に規則性がみられなくなる不規則睡眠覚醒型、睡眠相が毎日1~2時間ずつ遅れていくフリーランニング型、時差のある地域間をジェット機で移動する際に生じる時差型、交代勤務者でみられる交代勤務型、がある。サーカディアンリズム睡眠障害では、患者の脳の視交叉上核に存在する体内時計(生物時計)と、社会の時計(いわば体外時計)の間にずれが生じたり(外的脱同調)、身体内部の種々の生体リズム(睡眠覚醒、体温、メラトニン、内分泌リズムなど)の間に不調和が出現する(内的脱同調)。このことが、サーカディアンリズム睡眠障害の原因と考えられる。
1)~4)の主訴は、単独でみられるよりもむしろ、複数で同時にみられることが多い。たとえば、不眠があると、夜間の睡眠時間が減少し、ひいては日中に過剰な眠気が現れる。日中の眠気は、精神機能や身体機能を障害し、交通事故・医療事故あるいは産業事故などの原因になることも少なくない。
現在の日本社会においては、1)社会の急速な高齢化(高齢者では若年者よりも睡眠障害が高率である)、2)24時間社会への変化や生活様式の夜型化、3)社会環境におけるストレスの増大や大規模な自然災害によるストレスの増大、などの要因によって、人々の睡眠障害が増加しつつあり、成人の4人に1人が睡眠に関する悩みを抱えていると考えられる。
わが国は、超高齢社会(65歳以上の人口の割合が21%を超えた社会)に突入した唯一の国家である。医療においても、アルツハイマー病をはじめ、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、プリオン病、MCI(Mild Cognitive Impairment)など、各種認知症の早期診断・早期治療、あるいは、さまざまな老年期精神疾患への対応が喫緊の社会的要請となっている。千葉医師は、このような高齢者医療に対して、日本老年精神医学会認定医・指導医として、とくに統計学的画像解析(3D-SSP解析)によるSPECTなどの脳画像診断、脳波、髄液検査(タウ蛋白測定)、臨床遺伝学的検査(アポE遺伝子、プリオン遺伝子の多型・変異検索)、神経心理学的検査などを駆使して実績をあげている。認知症との鑑別疾患として、最近注目され始めたのが「高齢者てんかん」の増加である。
「てんかん外来」では、脳神経外科、小児科、神経内科などと連携し、日本てんかん学会認定医(てんかん専門医)を中心に診療を行なっている。てんかんはさまざまな精神症状を呈し、約3分の1の患者が心理的問題を抱えていると指摘されているため、単に発作を抑制するだけではなく、女性の結婚や妊娠にともなう催奇形性の問題など、てんかん患者のQOLの視点から、心理社会的側面を含めた包括的治療を進めている。
「睡眠クリニック」にあるビデオ・ポリゾムノグラフィ2床は、てんかんの精査や鑑別診断、治療評価においても重要な役割を果たしている。睡眠障害の中には、てんかんに類似する症状や、てんかんが合併していることもある。したがって、最新のポリグラフィの解析・編集機器とコンピュータ技術を駆使し、精神・行動・生体現象モニタリングシステムにより、異常な行動と脳波、眼球運動、筋電図などを対応させて診断することが重要である。
ポリグラフィは年間約200件施行され、専門外来と密接に連携しながら、睡眠覚醒障害、てんかん、認知症、せん妄などの診療や研究に広く活用されている。また、遠隔医療を睡眠医療やてんかん医療に応用する活動も開始しており、ポリソムノグラフィデータを交信しながら遠隔地の医療機関と会議を行っている。
スタンフォード大学睡眠障害センターとの国際共同研究(Prof. Nishino)も展開している。

医師プロフィール

1979年3月 旭川医科大学医学部医学科 卒業
1984年6月 旭川医科大学大学院医学研究科修了(医学博士)
1997年9月 旭川医科大学医学部精神医学講座教授
現在に至る