感情面の症状 家庭の医学

■不安や恐怖(神経症性障害気分障害〈うつ病〉、統合失調症など)
 なにが原因かわからず、ただ漠然と心配になるのが不安、なにが怖いのかわかっているのが恐怖で、よく生じる症状です。代表的な状態を列挙します。
1.からだの状態に関する不安
 心臓がドキドキする、息がしにくい、死ぬのではないかといった不安、なにか重病にかかっているのではないか、がんではないか、エイズではないか、脳の血管が切れるのではないかといった不安、からだの中になにかがある、皮膚の感覚が変だ、内臓が動いているように感じるといった不安、からだがにおうという不安などがあります。
 身内、友人、著名人が重病になったり亡くなったりすると、これをきっかけに自覚症状が強くなることもよくあります。
2.対人的な不安や恐怖(不安障害、パニック障害、統合失調症など)
 人に会うのが怖い、人の目を見られない、人前で話すと赤面したりことばが出なくなったりするといった恐怖、まわりで自分のことがうわさされている、観察されているといった不安などがあります。
3.特定の状況やものに対する不安や恐怖
 状況としては高所、閉所、広い場所、乗り物、遠出などがあり、ものとしては動物、さきのとがったもの、雷などさまざまです。
4.将来に対する不安(不安障害、統合失調症、うつ病など)
 以前不安になった場所で同じことが起こるのではないかという予期不安、病気が再発するのではないかという不安、ぼけるのではないかという不安などがあります。

■抑うつ感情(気分障害〈うつ病〉、神経症性障害、統合失調症、摂食障害など)
 気持ちが沈む、落ち込む、憂うつになる、はればれしない、むなしい、さびしいなどと表現される状態です。ひどくなると、将来に希望がもてなかったり、絶望的な気分になったり、過去のことへの後悔にさいなまれたり、自殺を考えたり実行に移したりする場合があります。

■高揚感情(躁病脳器質性精神障害など)
 抑うつ感情とは逆に、楽しくてしかたがない、そう快だ、なんでもできそうだ、などと表現される状態です。この場合、本人には悩みの自覚がなく、周囲がそれと気づくのがふつうです。

■感情の鈍ま・平板化(統合失調症)
 喜怒哀楽の豊かな感情がなくなる状態です。なにを見ても楽しいという感じがなかったり、会話中表情に乏しかったり声に張りがなかったりします。

■いらいら、怒りっぽい
 日常的によく体験する状態です。たいていの場合原因が推量できるので、本人も周囲もあまり問題にしません。いっぽう、理由なく起こる場合は病気からきているのかもしれません。
 しかし、いらいらや怒りっぽいというだけでは病気とはいえず、ほかにどのような症状があるのかが重要です。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)