からだにあらわれる症状 家庭の医学

 こころの病気や行動障害では、たいていの場合身体面にも症状があらわれます。以下は代表的な身体症状です。

■睡眠の障害(脳器質性精神障害アルコール関連障害統合失調症気分障害〈双極性障害、うつ病〉、神経症性障害心身症睡眠覚醒スケジュール障害睡眠時随伴症など)
 睡眠時間には個人差があり、何時間眠らなければいけないという一般的な判断はできません。それまでの睡眠とくらべて変化があらわれた場合に問題になります。
1.不眠(眠れない)
 不眠には寝つきがわるい就眠障害型、夜中に何度も目がさめてしまう中途覚醒(かくせい)型、朝早く目がさめてしまう早朝覚醒型、全般に眠りが浅く寝た気がしない熟眠障害型に区別されます。
2.過眠(眠りすぎる)
 日中の眠気が強い場合です。仕事の能率低下や運転事故などが問題になります(過眠症〈ナルコレプシーなど〉、睡眠時無呼吸症候群)。
3.睡眠のリズムが乱れる
 就眠や起床の時間が通常の時間帯から大きくずれてしまう状態をいいます。昼夜逆転の生活になったり、睡眠の時間帯がすこしずつずれていったりします。
4.睡眠時に生じる特殊な症状
 寝ている最中に足がむずむずしたり、ぴくっと動いたりして不快な感じがすることがあります。小児期に、怖い夢を見たり、驚いたり、寝ぼけたり、夜尿がみられたり、といった状態がありますが、これも睡眠の問題と関係しています。
 老年期に、大きな寝言をいったり寝ぼけて激しい行動に出たりすることがありますが、これも睡眠の状態と関係しています。

■食欲の障害(気分障害〈双極性障害、うつ病〉、統合失調症、摂食障害など)
1.食欲の低下
 食べたいと思っても食べられない、食べたくない、食べてももどしてしまうなどいろいろなかたちであらわれます。もちろん内科的な疾患をまず疑わなければならないのですが、精神疾患でもよくみられる症状です。通常、体重の減少を伴います。
2.食欲の亢進
 食欲が進む、食べすぎるといった状態や、食べるのをやめたくてもとまらないという状態とがあります。この場合も、まず内科疾患を疑いますが、精神疾患でもみられることがあります。体重の増加を伴う場合とそうでない場合があります。

■その他の症状(気分障害〈うつ病〉、恐怖症(恐怖症性不安障害)身体表現性障害など)
 便通の異常、頭痛、動悸(どうき)、過呼吸、手のふるえ、尿の回数が多いなどの身体症状がみられることがあります。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)