手根部靱帯損傷〔しゅこんぶじんたいそんしょう〕 家庭の医学

 外傷や炎症などにより手根骨(手くびにある小さい骨で8つある)の配列異常が生じ、結果的に手根骨の間に関節症性変化(軟骨の変性などの変化)が進行する病態です。
 いずれも手くびの痛みを生じますが、X線検査にて配列異常がみとめられる静的不安定性と、負荷を加えたときにあきらかとなる動的不安定性とがあります。

■舟状-月状離開
 手根骨のうち、舟状骨(しゅうじょうこつ)と月(げつ)状骨との間に障害が出たものです。舟状骨と月状骨間の解離(SL解離)が生じ、X線検査で3mm以上のすきま(Terry-Thomas徴候)がみとめられます。
 進行すると舟状骨周辺の2次性の関節症となり、舟状-大菱形小菱形骨間関節(STT関節)の変形やSLAC(scapho-lunate advanced collapse)wristと呼ばれる状態が生じます。

[治療]
 外傷などによる急性期のSL解離では、靱帯(じんたい)を修復する手術をおこないます。慢性期では、症状が軽ければサポーターなど対症療法をおこないますが、症状が強ければSTT関節固定や手根骨の部分切除、あるいは部分関節固定などの手術をおこないます。

■月状-三角離開
 手根骨のうち、月状骨と三角骨との間に障害が出たもので、月状骨や舟状骨に対し三角骨は中側へ向く変形がみられます。いずれも診断には通常のX線検査のほか、掌背屈(しょうはいくつ)や側屈(橈尺屈)などのストレスをかけて撮影します(手くびを動かした状態でX線撮影する)。

[治療]
 治療はSL解離と同様に、急性期では靭帯を修復する手術、慢性期では部分的な関節固定術などがおこなわれます。

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