動脈血栓症、動脈塞栓症〔どうみゃくけっせんしょう、どうみゃくそくせんしょう〕

 動脈血栓症・動脈塞栓症は、手足の末梢動脈が血栓で突然閉塞することをいいます。突然手足がしびれ、痛みを感じ、冷たくなり、色が白く、あるいは紫色に変色し、動かせなくなります。これは、皮膚の温度や色が変化し、疼痛(とうつう)を伴い、その領域を支配する血管の動脈の脈拍が触れないことで、神経障害のためのしびれ、まひとは区別されます。
 閉塞部位をバイパスする側副血行路(そくふくけっこうろ)などが発達していないと、四肢の切断に至ることもあります。発症後すみやかに閉塞部位よりも心臓近位部からカテーテルを挿入して、先端のバルーンをふくらませ、引き抜くことによって血栓を除去することができます(フォガティのカテーテル)。閉塞した血管を急激に開いた場合、筋肉に障害が起こって、筋融解を起こし、血液成分を変化させ、高度の腎不全を招くことがあります(代謝性筋腎症候群:MNMS)。
 このような急激に発症する動脈血栓症には、その原因となった血栓がその動脈の閉塞部位以外のところでつくられ、血流に乗ってそこに運ばれて完全閉塞する場合もあります。これを動脈塞栓症といいます。血栓の源は心臓にあることが多く、心臓弁膜症、心房細動、心筋梗塞、心筋症、心不全などがその基礎疾患であることが多いのです。動脈塞栓症が起こってはじめて、重大な心疾患が発見されることもまれではありません。
 塞栓症が四肢に生じた場合は以上のような症状ですみますが、脳動脈に運ばれて閉塞した場合は、重篤な脳卒中となり、死亡もしくは重大な後遺症を残すのがふつうです。そのような血栓の源が心臓にある場合は、血栓をつくらないように抗凝固療法を継続する必要があります。これには、アスピリンやワルファリンカリウムという薬剤を使用します。
 心臓の中に血栓をつくる原因の第一は心房細動です。特にすでに脳梗塞(塞栓症)を経験した人、65歳以上の人が、高血圧や心不全、糖尿病、虚血性心疾患を合併すると血栓ができやすいのです。高齢者が増加したため、心房細動が原因の脳塞栓症の発症がまれではなくなり、予防のためにワルファリンカリウムや、最近ではXa阻害薬などの新規の経口抗凝固薬(NOAC)を服用します。
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