動脈硬化とその関連疾患
動脈硬化は加齢に伴って起こってきますので、必ずしもすべてが病気とはいえません。しかし、その進行が年齢にくらべて早い場合、あるいは特定の臓器に強くあらわれた場合には病気です。
動脈硬化が原因で起こる病気には、心臓の血管の動脈硬化では虚血性心疾患、腎臓の動脈硬化では腎機能障害・腎不全、脳の動脈硬化では脳梗塞、そして大動脈や四肢の動脈の動脈硬化では閉塞性動脈硬化症や大動脈瘤(りゅう)などがあります。
■動脈硬化の危険因子
疫学的に調べて、あきらかにその疾患の発症と関係する要因をリスクファクター、あるいは危険因子と呼びます。動脈硬化の危険因子には、次のようなものがあります。
1.脂質異常症
2.高血圧
3.喫煙
4.糖尿病
5.メタボリックシンドローム
6.慢性腎臓病
7.肥満
8.年齢
9.性別(男性)
10.家族歴
11.高尿酸血症
12.精神的ストレス
13.運動不足
これら動脈硬化の危険因子は、のちに述べる虚血性心疾患の危険因子でもあります。また、これらの因子が複数組み合わさると、単にそれらを足し算した以上に危険が増すとされています。なかには年齢や性別のように修正不可能な危険因子もありますが、多くは修正可能なもので、これらを修正することが動脈硬化の進行を抑えるうえできわめて重要です。
■養生のポイント
動脈硬化は10代に始まり、徐々に進行していくと考えられています。このため、いろいろな臓器に障害が及ぶ前にその進行を阻止し、臓器障害を予防することが重要です。もし臓器障害が進展している場合は、さらなる増悪を防止しなければなりません。そのためには前述した危険因子をいかに取り除くかが治療のカギとなります。
■生活上の注意
□食事
1日の摂取エネルギーはその人の活動量で異なりますが、標準体重1kgあたり30kcalがめやすとなります。標準体重(kg)を簡単に計算するのは、身長(cm)から100を引いて0.9をかける方法がもっとも一般的ですが、身長(m)の2乗に22をかけてもだいたい同じ値が得られます。
動物性脂肪や肉などの動物性たんぱく質はコレステロールを上昇させます。逆に植物性脂肪や魚油、植物性たんぱく質はコレステロールを下げるはたらきがあります。
食物繊維にもコレステロールや胆汁酸を吸着して腸からの吸収を抑えるはたらきがあり、やはりコレステロールを下げます。アルコールは中性脂肪を上昇させる作用があります。
□運動
運動によってLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が下がり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加します。このことはとりもなおさず動脈硬化の危険因子を是正することになります。臓器障害のないかぎり、運動は積極的におこなうべきですが、競争心をへたにあおり運動量が過剰にならないような配慮が必要です。できれば息切れせずに長時間持続できる律動的な運動がよく、散歩、ジョギング、水泳、サイクリングなどが推奨されます。
■心構え
高血圧と同様、動脈硬化も中年から発症することが多く、生涯にわたって続く病気です。ですから、そのつもりで長期的な治療、というよりは予防が必要ということになります。その目的は動脈硬化の発症あるいは進行を抑え、心筋梗塞や脳血管障害など臓器障害を予防することにあります。動脈硬化をもたらす危険因子を1つでも減らすために、自分にはなにができるかを十分に考え、できることから始めましょう。
(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)
動脈硬化が原因で起こる病気には、心臓の血管の動脈硬化では虚血性心疾患、腎臓の動脈硬化では腎機能障害・腎不全、脳の動脈硬化では脳梗塞、そして大動脈や四肢の動脈の動脈硬化では閉塞性動脈硬化症や大動脈瘤(りゅう)などがあります。
■動脈硬化の危険因子
疫学的に調べて、あきらかにその疾患の発症と関係する要因をリスクファクター、あるいは危険因子と呼びます。動脈硬化の危険因子には、次のようなものがあります。
1.脂質異常症
2.高血圧
3.喫煙
4.糖尿病
5.メタボリックシンドローム
6.慢性腎臓病
7.肥満
8.年齢
9.性別(男性)
10.家族歴
11.高尿酸血症
12.精神的ストレス
13.運動不足
これら動脈硬化の危険因子は、のちに述べる虚血性心疾患の危険因子でもあります。また、これらの因子が複数組み合わさると、単にそれらを足し算した以上に危険が増すとされています。なかには年齢や性別のように修正不可能な危険因子もありますが、多くは修正可能なもので、これらを修正することが動脈硬化の進行を抑えるうえできわめて重要です。
■養生のポイント
動脈硬化は10代に始まり、徐々に進行していくと考えられています。このため、いろいろな臓器に障害が及ぶ前にその進行を阻止し、臓器障害を予防することが重要です。もし臓器障害が進展している場合は、さらなる増悪を防止しなければなりません。そのためには前述した危険因子をいかに取り除くかが治療のカギとなります。
■生活上の注意
□食事
1日の摂取エネルギーはその人の活動量で異なりますが、標準体重1kgあたり30kcalがめやすとなります。標準体重(kg)を簡単に計算するのは、身長(cm)から100を引いて0.9をかける方法がもっとも一般的ですが、身長(m)の2乗に22をかけてもだいたい同じ値が得られます。
動物性脂肪や肉などの動物性たんぱく質はコレステロールを上昇させます。逆に植物性脂肪や魚油、植物性たんぱく質はコレステロールを下げるはたらきがあります。
食物繊維にもコレステロールや胆汁酸を吸着して腸からの吸収を抑えるはたらきがあり、やはりコレステロールを下げます。アルコールは中性脂肪を上昇させる作用があります。
□運動
運動によってLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が下がり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加します。このことはとりもなおさず動脈硬化の危険因子を是正することになります。臓器障害のないかぎり、運動は積極的におこなうべきですが、競争心をへたにあおり運動量が過剰にならないような配慮が必要です。できれば息切れせずに長時間持続できる律動的な運動がよく、散歩、ジョギング、水泳、サイクリングなどが推奨されます。
■心構え
高血圧と同様、動脈硬化も中年から発症することが多く、生涯にわたって続く病気です。ですから、そのつもりで長期的な治療、というよりは予防が必要ということになります。その目的は動脈硬化の発症あるいは進行を抑え、心筋梗塞や脳血管障害など臓器障害を予防することにあります。動脈硬化をもたらす危険因子を1つでも減らすために、自分にはなにができるかを十分に考え、できることから始めましょう。
(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)